パニック発作に悩まされている方は、大勢いらっしゃると思います。
発作が実際に起きたとき、起きそうなときの対処法というのはありますが、それとは別に、発作を起こりにくくするために、普段のライフスタイルを変えていく、というのは、有効な手段だと思います。
どのように変えていけばいいか、ポイントを5つ挙げて、簡単に説明していきたいと思います。
1.普段から、深くリラックスする時間を、習慣的に持つ
深くリラックスするというのは、ひっきりない頭のおしゃべりをやめて、空っぽの状態にし、ただ、そこに在る状態、存在している状態を感じる時間です。呼吸法や瞑想、静かな音楽を聴く、自然の音に耳を傾ける、アロマを使う、キャンドルの炎を見つめる等、その状態を作り出すためのサポートツールは、色々あると思います。例えば呼吸法だと、実際に脳が信号を伝えて、体全体がリラックス状態に至るまで、呼吸法を始めてから4分かかるという研究結果があります。少なくとも5分以上、できれば15分くらいは時間を取って続ける方がいいと思います。リラクゼーションは、蓄積効果があるので、たまに長時間するよりは、少しの時間でも、毎日続けることにより、普段から落ち着きを得やすく、パニックが起こりにくい体質になっていくはずです。
2.規則正しく運動する
運動は、体にたまったストレスを発散させるために、有効な手段です。心身を興奮状態に導くストレスホルモンであるアドレナリンは、体を動かすことによって、減少させることができます。体を動かすことで、余分なエネルギーを消費しリラックスすると、体と連動している心もリラックスします。
3.刺激物をさける(特に、カフェイン、ニコチン、砂糖)
カフェインとニコチンは、体を興奮状態に導く刺激物で、不安症状を悪化させます。カフェインは、コーヒーだけではなく、多くの種類のお茶、コーラ製品、チョコレート、薬局の薬等に含まれています。カフェインとニコチンを控えると、不安症状が軽減するということは、よくあります。また、砂糖については、大量に摂取した後、急激に血糖値が下がり、低血糖になったとき、パニック発作と同様の状態になります。パニック症状の悪化を避けるために、砂糖を摂りすぎないように気をつけましょう。
4.自分の気持ちを認め、表現することを学ぶ(特に、怒りと悲しみの感情)
怒りや悲しみなどの、いわゆる否定的な感情を表現せず、抑圧する傾向にあると、気づかないうちに、漠然とした慢性的不安感を持ちやすくなります。風船が膨らむと、最後には空気圧で爆発しそうになるように、感情も、無視したり押さえつけたりしてて外に出さないでいると、だんだん内側からのプレッシャーが強まり、外にでようと暴れ出します。原因不明のパニック障害に苦しむ方を見ていると、長年にわたって無理に押さえつけた感情エネルギーがどこかに蓄積している場合が少なくないように思います。普段から、自分の気持ちにちゃんと気づいてあげ、それを感じて表現してあげる(悲しいときは泣くなど)ことは、慢性的な不安を抱えないために、大切なポイントだと思います。
5.より穏やかで、人生を受け入れるようなセルフ・トークとコア・ビリーフを採りいれる
セルフ・トークというのは、心のつぶやきとか、頭の中のおしゃべりのことです。これは無意識のうちに、ほぼ自動的に湧き起こってくるので、意識してキャッチしないと、通常、気づかないものです。不安症状があったり、うつ状態の人は、セルフ・トークが「~したらどうしよう」「どうせ~だ」などと、否定的な言葉づかいをしている場合が多いです。コア・ビリーフ(核となる信念)は、セルフ・トークの出所となっているものです。いわば、自分の意識の奥深くにある、「人生とは~である」「人とは~である」「自分とは~である」といった信念で、これが歪んでいたり、否定的だったりすると、落ち込みや不安、怒りといった、いわゆる否定的な感情を持ちやすくなります。セルフ・トークやコア・ビリーフを、もっと自分が生きやすくなるようなものに変えていくと、不安にとらわれにくくなり、パニック発作も起きにくくなっていくと思います。
以上、パニック発作になりにくいライフスタイルを、5項目ご紹介しました。人によって、どの項目を重点的に改善すればいいかは、異なると思いますが、これは、パニック発作のある人だけではなく、より不安になりにくい健康な心をもつために、すべての人に役立つポイントだと思います。よかったら、できるものだけでも、実践してみてください。
(参考文献:Bourne, E. J. (2000) The Anxiety and Phobia Workbook. CA: New Harbinger.)
(Chika)