心とか、精神というのは、目に見えないけれど、エネルギーを持っています。
抑うつ状態は、心のエネルギーが停滞した状態。本来、流れて変化しつづけるべきものの動きが鈍って、淀んでしまった状態です。感情を長い間抑圧したり、ストップ(麻痺)させたりすると、この状態になります。
怒りは、エネルギーの噴出。噴火山の爆発みたいなものです。マグマと同様、怒りを熱く体感し、色で表すと「赤黒い」と感じる人が多いです。マグマと同じで、すでに生まれてしまったエネルギーは、外に出さないよう抑えてしまうと、それだけ圧が強くなり、噴火するとき、爆発になってしまいます。爆発はたいてい破壊をもたらします。そうならないよう、ためないで小出しにする、その場合も、怒りの対象者ではなく、第三者に話を聞いてもらうなどして、安全な出し方をする、というのがいいかと思います。また、量は同じでも、エネルギーの質を変えて表現すると、上手に処理することができる場合もあります。例えば、被害者やその家族が、怒りや憎しみを変換して、社会活動にエネルギーを費やしたり、作家や芸術家が、作品を生み出すエネルギーにしたりするのは、フロイトのいうところの「昇華」であり、破壊的ではなく建設的なエネルギーの使い方ですね。
悲しみも同様です。悲しみの感情は、泣いたりして表現し、外に出せば、エネルギーの表出になり、流れと変化が生まれて、やがて消えていくのですが、我慢して抑えてしまうと、心の停滞を生み、うつに転じることが多いようです。
最後に、不安は心のエネルギーをとても浪費する感情です。不安症の人を見ていると、必要なことにエネルギーを使わないで、無駄なことに多くのエネルギーを費やしていることに気づきます。だから、とても疲れるわりに、現実に変化が起こりにくい。ああなったらどうしよう、とあれこれ考えて、動けなくなり、必要な一歩が踏み出せないのは、その典型です。ひどい場合は、明日、用事があるから早く寝たほうがいいのに、すでにきれいな部屋の掃除を、寝ないで一晩中する人もいます。こういった強迫神経症的な行動の裏にも、強い不安が隠れていたりします。不安は、意識が現在ではなく、未来に行き過ぎるために起きることが多いので、先のことを考えすぎないで、マインドフルに生きる、つまり、「今、ここ」に意識を集中して生きることで、浪費を防いでエネルギー効率をよくすることが可能になります。ただし、寝ないできれいな部屋を夜中に掃除するような人は、目かくして見ないようにしている心の傷から逃れようとしている場合がよくあるので、マインドフルネスのような心のコントロール法と並行して、その傷の手当てをちゃんとしてあげる必要があるかもしれません。
今回は、思いつくままにいろいろ書いてみましたが、今後、心のエネルギーに関しては、量子力学の観点からも、質と量のある実態として、色々なことが明らかになってくるのではないかなあ、などと思っています。