盛岡心理カウンセリング・ハミングバード

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07月

「秘密の花園」に学ぶ、魔法の使い方

「秘密の花園」(バーネット作 「山内玲子」岩波少年文庫)という本があります。子供向けのお話ですが、大人にとっても、幸せに生きるための大切な真実を説いている内容だと思うので、今回はこのお話を、少しご紹介したいと思います。

簡単にいうと、こんなストーリーです。

インドで育った、お金持ちだけどわがままで、いつも不機嫌な、心身ともに不健康な女の子、メアリは、孤児になり、母国イギリスのお金持ちの叔父さんのお屋敷に引き取られました。イギリスの自然や、貧しいけれど健全な召使のマーサ、その弟のディコンとの触れ合いを通して、メアリはだんだん変わっていきます。

メアリを引き取った叔父さんは、強い心の痛みゆえに長年心を閉ざしている偏屈ものでした。この叔父さんにはコリンという一人息子がいるのですが、物質的な豊かさをあてがうばかりで、息子を世間の目から隠し、部屋に閉じ込めたきり、会おうとしません。当然ながら、このコリンも、心身ともに病んでいきます。

メアリは、いとこであるコリンと、ふとしたことから出会い、心を通わせるようになります。

メアリとコリンは、どちらも身勝手で、人を見下すような態度の、不愉快な子供だったのですが、それは優しさを知らない孤独な境遇ゆえであり、気高く、賢明で、心優しいディコンと、その母親である、聖母のようなスーザン、すべての人を癒し、健全にせずにはいられない自然を通して、180度変わっていきます。

そして、最後に、コリンは、父親の、暗闇に閉じ込められていた心を開き、光を入れて、祝福を与える存在となるというお話です。

コリンが心身を病んでいったのは、父親に「この子は自分のようにせむしになる。長く生きられない。」と信じられ、召使たちが自分についてそう話すのを聞いて育ち、自分で強くそう信じるようになったからでした。コリンは人目を避けて、寝て暮らすようになり、不安にさいなまれ、みじめで癇癪もちの男の子になってしまいます。本当はどこにも悪いところがないのに、体が弱くなり、歩けなくなって、心身ともに病んでいってしまったのです。

そんなある日、コリンはメアリに、はっきりと「あなたはせむしじゃない」と否定され、自己憐憫をやめるように言われます。それ以降、コリンはだんだんと変わっていきます。

物語の終盤に、コリンが、どうやって健康な心と体を自分で再生していったか、描かれている部分があるので、ここに抜粋し、引用します。

❝「メアリがこの庭を見つけたとき、庭はほとんど死んだように見えました。」コリンは演説を続けました。「ところが、なにかが土のなかからいろいろなものを押し出して、無から、ものを作り出したのです。(中略)名前がわからないので、それを魔法と呼びます。(中略)庭に出るようになってから、ときどき木々のあいだを通して、空を見上げしたが、ふしぎな幸せな気分になりました。なにかがぼくの胸のなかで押し上げたり引っ張ったりして、呼吸を早めているような感じでした。魔法はいつも押したり引いたりして、無から何かをつくりだします。すべてのものは魔法からつくられます。(中略)この庭の魔法はぼくを立たせてくれ、ぼくが大人になるまで生きられることを教えてくれました。」❞

❝「これから、その魔法を少し手に入れて、ぼくのなかに取り入れ、ぼくを押したり引いたりして強くさせるという実験をしてみようと思います。(中略)ぼくが初めて立とうとしたとき、メアリはできるかぎりの早口で『がんばって!がんばって!』と唱えました。そしてぼくは立つことができたのです。もちろん同時にぼくも努力しなければならなかったけど、メアリの魔法が助けてくれました―それからディコンの魔法もです。毎朝、毎晩、それから昼間も覚えている限り、ぼくは『魔法がぼくのなかにある!魔法がぼくを癒してくれる!ぼくはディコンのように強くなる、ディコンのように強くなる!』とくりかえし唱えることにします。」❞

こうして、メアリたちに会うまでは歩くことさえできなかったコリンは、メアリやディコンの応援を力にし、自分の中に強い意図を持つことで、自分の心や体を癒し、強化していきます。

「自分はこうなる」という意図は、良くも悪くも、自分自身や、自分を取り巻く現実を創造していきます。ほかの人たちの意図が、自分の意図に共鳴すると、さらにそれを強める働きがあります。スポーツの選手が試合しているときに、応援の声が力になるといっているのは、文字通り、そうなっているのです。

コリンは、はじめは、悪い方向に魔法を使っていました。周囲の刷り込みを受けて、自分は長く生きられないと、何百回、何千回と、意図してしまい、実際に体が弱っていきました。意図は反復することで強化され、パワーを増幅するものです。

自然の法則である、創造の魔法の力に気づいたコリンは、いい方向にその魔法を使うよう、「実験」を行いました。これによって、コリンは見違えるように健康になり、強く、幸せな少年になりました。

一人の人の状態は、接触を持つ周りの人にも影響を及ぼすので、コリンの変化は病んだ父親にも幸せな変化をもたらすに至りました。

アファメーションが潜在意識に影響を及ぼし、現実を変えていくという、創造性の魔法を、とてもよく表しているお話だと思うので、興味がある方は、「秘密の花園」を一度読んでみてはいかがでしょうか。