盛岡心理カウンセリング・ハミングバード

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05日

精神障害の診断について

うつ病(大うつ病)、躁うつ病(双極性障害)、統合失調症、アスペルガー等、精神科や心療内科で診断を受けたとき、からだの病気のように、こころの病気の申告をされたと思って、ショックを受ける方がいるかもしれません。また、今まで自分が苦められていた症状に名前がついて、安心される方も、中にはいるかもしれませんね。得体のしれないものより、正体がわかったほうが、恐怖心は薄れるものなので。

私は、アメリカで多くの精神障害のクライアントさんに診断を行っていましたが(アメリカでは資格のあるサイコセラピストなら診断書を書くことができます)、その経験を踏まえたうえで、こう言いたいと思います。「精神障害の診断名を気にしすぎないでください。」

第一に、精神医療は、身体の医療にくらべて、まだまだ発展途上です。

診断の際は、ICD-10と並ぶ精神障害の診断の手引書であるDSM-IV(The Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders IV) に基づいて病名を付けていましたが、この手引書、1952年のDSM-Iという初版では、精神障害の種類は106種類しかありませんでした。1968年に出版されたDSM-IIという改訂版では185種類、1980年に出版されたDSM-IIIは最初265種類だったのが、さらに1986年、DSM-III-Rという改訂版で297種類に増やされ、現在、使われているDSM-IV(1994年リリース)は365種類。要するに、心の病気の種類は、過去60年余りで3倍に増えているのです。(DSMの最新版は2013年5月に出版されたばかりのDSM-5ですが、まだ現場ではそれほど普及していないと思います。)これは、実際に世の中に心の病気が増えたのではなく、「こういう心の病気がある」と人間が定めた種類が増えたということです。 最新版のDSM-5では、日本で一時期盛んにいわれたアスペルガー障害が病名から外され、自閉症の領域に入れられるなど、今まであった病名がなくなったり、逆に新しい病名が付け加えられたりしています。

第二に、精神病や精神疾患の診断は、主観的なので、残念ながら、比較的信頼性に乏しいのです。

これはつまり、診断を下せる二人の専門家がいたとして、同じ患者さんを診て、同じ病名をつける可能性が、比較的低いということです。それぞれの専門家が、患者さんの症状のどこに注目するか、その状況をどう判断するかによって、うつ病と判断したり、PTSDと判断したり、ということが、実際、よくあります。なので、A病院の精神科に行ったときは双極性障害と言われたが、B心療内科で診てもらったら、統合失調症と言われ、C病院では大うつ病といわれた、などということも、ありえるわけです。そもそも、体の病気と違って、心という目に見えないものに診断を下すわけですから、ある程度主観に頼らざるを得ないのは、仕方がないことだとは思います。が、やはり、それは、一人の専門家の意見を鵜呑みにしないほうがいいという結果にもつながるわけです。

第三に、精神障害の診断は可変的です。

心の症状というのは変わりうるものなので、私がアメリカで仕事をしていたときは、クライアントさんの診断名は、理想的には3ヶ月ごとに見直すことが推進されていました。最初にはわからなかった症状があとで見つかって、比較的軽い精神障害である適応障害という診断がOCD(強迫観念症)に書き換えられたり、妄想性障害だと思っていたのが、妄想ではなく不安感が強いだけと判明したので、全般性不安障害に書き換えられたり。治療の末、PTSDの症状がなくなって病名が削除されたり、というのも、もちろんあります。要するに症状がなくなり、治ってしまえば、精神障害ではなくなるものなのです。一生付き合っていかなければならない精神病というのも、あるにはありますが、それほど多くはありません。

第四に、過剰診断というのがやっぱりあって、例えば双極性障害が過剰診断されやすいというのはよくいわれています。私の印象では、日本では特に、双極性障害に加えて、統合失調症や発達障害が過剰診断されているのではないかという気がします。

以上の理由で、「自分は、心の病気なんだ。〇〇病なんだ。」と、心配しすぎないこと、振り回されすぎないことは大事だと思います。(それから、できればセカンドオピニオンを得ることも。)自分は病気だと考えるよりも、今はこういう状態だけれど、それは変わりうるものだととらえることが大切だと思います。