最近、日本でも、認知行動療法が定着してきていて、認知行動療法を使ったカウンセリングの提供をする医療機関やカウンセリング会社が増えてきているように思います。
私が日本に帰ってきたばかりの頃は、まだ、認知行動療法さえもさほどよく知られておらず、大学院を出た臨床心理士の同僚に、特段、心理療法は習っていない、日本のカウンセリングは傾聴がメインだよ、と聞かされて、びっくりした記憶があります。
認知行動療法が編み出されたのは1950~1960代で、心理療法としては、アメリカの大学院では必ず習う、基本中の基本であり、個人的には、古典的な手法だと思っています。認知行動療法が効果的だというエビデンスは多くありますが、その後、フォローアップで継続的な効果を調べたら、効果は一時的で、後になって、だんだん薄れていき、元に戻っていくという研究データがあって、なるほどな、と思ったことがあります。
現在は、認知行動療法を基盤として、より発展した、第3ウェーブといわれている療法が数多く編み出されています。DBT(弁証法的行動療法)や、ACT(アクセプタンス・コミットメント・セラピー)、マインドフルネスは、私が比較的よくカウンセリングに取り入れている療法ですが、これらも第3ウェーブに入ります。
どの療法にも、長所と短所があって、これですべての症状が必ずよくなる、という万能の療法はありません。どの療法を使ったら効果がでやすいかは、その人の症状によって、また、気質や認知の度合いによっても変わってきます。
例えば、認知行動療法は、比較的浅い、日常的なストレスを解消するにはとても効果的だと思いますが、深く刻まれた感情的なトラウマを解消するには届きにいです。思考や行動を変えることで感情を変えるという理念が認知行動療法の基盤になっているのですが、視点を変えて考え方を変えるというのは、強い感情に圧倒されているときは、できにくいものです。そういう時は、その感情にのまれないで観察しつつ味わうという、マインドフルネスとか、自分の感情と向き合って対話することに長けている、ゲシュタルト療法の方が、効果がでやすいと思います。
そもそも、心理療法という、人が頭で考えて体系づけたものに合わせて、人の心を当てはめるというのは、無理があると思います。その人の心に合わせて、やり方を調節する方が、自然なのではないでしょうか。
こういうわけで、カウンセリングの手法を限定することに抵抗を覚えるため、私は、直観に従って、その人の状態や資質を見極めて、合うと思われるやり方をひっぱってくることをしています。
