盛岡心理カウンセリング・ハミングバード

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メンタルヘルス

トラウマの真実(1)

先日、アメリカの精神科医で、トラウマの研究・治療の第一人者である、Bessel A. Van der Kolk博士のセミナーを受けました。といっても、セント・ルイスで行われているセミナーを、日本に居ながらにして、ウェブキャストでライブで受けたのですが(おかげで徹夜だったのですが)とても興味深い内容で、勉強になりました。

なので、その内容を、ほんのさわりだけですが、いくつか取り上げ、私が臨床上、経験し、理解したことと合わせて、ここでシェアしたいと思います。

①トラウマの言語は、言葉ではなく、感覚である。

トラウマを受けた人というのは、心身が「戦うか逃げるか反応*」になったまま、抜け出せなくなった状態にある。(*戦うか逃げるか反応=危険を察知したとき、他の感覚がすべてシャットダウンし、闘って相手を倒すか、走って相手から逃げるか、いずれかの手段を取るために全神経が集中すること。この時、体は、アドレナリンを放出し、素早く動けるよう、心拍数があがる・筋肉が収縮する・呼吸が早まる等の準備をする。)

トラウマは、体に感覚として染みついているものなので、何が起きたかを言葉で語るよりも、体の感覚を変えてあげる方が、症状の軽減に役立つ。なので、例えばヨガなどの実践は効果が高い。EMDR(指の動きに合わせて、眼球を左右に動かす治療法)も、感覚をシフトさせるのに役立つため、トラウマには高い効果が期待できる。トラウマの癒しには、トラウマとなった出来事を追体験したり、その詳細を言葉にして語ったりする必要は、必ずしもない。

②トラウマを受けた人は、過去に生きている。

ひどく衝撃的な経験をして、それがトラウマになった人は、そのまま時間がとまったかのように生きてしまう。その時の感覚のままに現実を見て、周りのあらゆるものにトラウマの原因となった事象を投影する。結果として、目に見えない危険から身を守るため、常に緊迫した状態にある。「その経験はもう終わったのだ」いうことを、本人の意識にわからせることが、トラウマ治療の最終目標である。

③トラウマを受けた人は、自分の内面を見つめることを恐れる。

トラウマを受けた人は、体の感覚を遮断してしまって感じることができず、自分の内面を見つめること、気持ちを感じることを、なんとかして避けようとする。なぜなら、自分の中に潜ると、恐ろしいものを見なければならないと感じるから。呼吸も浅い人が多い。なぜなら、深い呼吸は、感覚とつながり、自分自身の感情を再び感じることを、許容してしまうから。なので、アルコールやドラッグ、その他の対象に耽溺して、感覚や気持ちを紛らわせる人が、トラウマの患者には多い。けれども、それは逆効果で、逆説的だが、トラウマの克服には、自分自身とつながり、感覚や気持ちを再び感じることが、必須である。

まだまだ、セミナーからくみ取ったことは多いのですが、今日はこの辺にしておきます。また機会があれば、まとめて書くかもしれません。

ちなみに、Van der Kolk博士のお父さんは、強制収容所に囚われていた経験があるのだそうです。はっきりとは言っていませんでしたが、ニュアンスから、多分、第二次世界大戦中のナチの収容所だと思われます。お父さんは、強制収容所から釈放されて帰宅したのち、酒に溺れて、幼い子供だった博士に暴力をふるったのだそうです。

私がアメリカで参加したトラウマのセミナーのプレゼンターは、ほぼ例外なく、自分自身が筆舌に尽くしがたいトラウマを潜り抜けて生き延びてきた人ばかりでしたが、博士もおそらくそうなのだろうと思いました。

ちなみに、この博士はDSM-Ⅳ(すべての精神病が分類され、その診断基準が詳細に記載されている、精神医療従事者のマニュアル的な本)のトラウマに関する執筆も手掛けた有名な人のようです。素晴らしい業績を残した多くの人がそうであるように、この人もまた、逆境を昇華することにより、自己実現を果たした一人なのだろうと思います。

                                                     (Chika)              

 

 

対人関係を癒やすエクササイズ

対人関係で悩まない人というのは、あまりいないと思います。自分と人との関係は、古今東西、普遍的に悩みの種なのだと思います。

苦手な人との付き合いは、避けてしまえればいいのですが、いつもそういうわけにはいきません。親子や兄弟、職場の人など、選べない人間関係も多いですよね。

対人関係というのは、自分の内面を映し出す鏡である場合が多く、自分の課題は、苦手なタイプの人となって、何度も繰り返し現れることがよくあります。

課題をクリアすると、自分の段階がワンステップ上がるので、不思議とそういう人と出会うことがなくなったりします。

逆に、課題に気づかないで、避けたり逃げたりし続けると、気づくまで、時と場所を変えて、繰り返し同じ状況に遭遇することになります。

どんな対人関係にも学びは存在するものですが、苦手な人との付き合いは、特に大きな学びが隠されているものです。

 

 

ということで、今回は、誰かとの関係を癒やすためのエクササイズをご紹介します。

 

①あなたと、あなたが現在衝突している人、またはうまく付き合えないで困っている人の象徴的なイメージを、雑誌から切り抜いて、画用紙の端と端に貼ります。または、絵にかいてもOKです。

②対立している相手からあなたに向かって、矢印を書きます。矢印の上に、相手があなたに対して行った不快な言動を書き込みます。矢印は何本書いてもかまいません。

③あなたの周りに、想像上の防御壁を築きます。この防御壁は、相手の攻撃から身を守るためのものなら、レンガやレーザー光線、その他、何でできていても、どんなものでも構いません。

④防御壁によってあなたの身が安全になったら、今度は、相手の絵の周りに、相手の癒しや成長、平和への願いを書き込みます。相手の幸せのための祈りや希望を言葉や絵にして書いてみましょう。

⑤この相手との関係性がもたらすネガティブな影響から癒やされたら、どんな目標や希望をかなえたいか、自分の絵のまわりに、言葉や絵、色、写真、雑誌の切り抜きなどを用いて、表現します。

 

 

苦手な相手のためにポジティブな思いを呼び起こすことは、なかなか難しいものです。でも、これができたら、自分の意識に確実に変化が及び、何よりも自分自身の癒やしになるので、効果は高いと思います。

よかったら試してみてくださいね。                                                                   (Chika)

 

 

 

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自己への慈しみと自尊心

近年、アメリカの心理セラピストの間では、自尊心を高めるよりも、自己への慈しみをはぐくむほうが、心にとって健康的であるといわれるようになってきました。

そもそも、自己への慈しみと自尊心は、どう違うのでしょうか。

心理学博士であり、脳心理学者でもあるるウォーデン博士は、自尊心は下記の点で問題があるとしています。 

 

・他者からの承認に重点が置かれている

・自分以外の価値観に合わせて生きる結果、満足感を損なう可能性がある。

・高めることが難しい

・非常に不安定で、最新の成功や失敗に応じて上下する。

・ナルシシストで自己中心的になる危険性がある。

・しばしば、人はこれを、優越感を持つことによって作り出そうとする。

・自尊心が高い人は、しばしば怒りや攻撃性も強い。

・見た目や競争心、人を卑下することにより、生みだされることがある。

 

自己への思いやりと自尊心は、双方とも自分に対する肯定的な気持ちを含んでいます。この2つの違いは、

 

・自尊心は、自分を「価値があり、好ましく、有能である」と評価することから生まれる。

・自己への思いやりは、自己評価を含まないで、かつ、自分を気づかい、自分とのつながりを持つという、肯定的な感情を伴う。

 

なので、自己への思いやりには、自尊心にみられる欠点を持たないと、ウォーデン博士は言います。

 

自尊心に対し、自己への思いやりは、下記のように特徴づけられています。

 

・ナルシシズムと結びついていない。

・エゴの脅威から守ってくれるので、不安感が少なくてすむ。

・過去の失敗に対し、より大きな責任感を持つことができる上、それを苦悩する度合いも少なくなる。

・安定性が高い

・より強いつながりをもたらす(他者と比較したり、怒ったりすることが減り、よりよい関係を築くことができるため。)

 

自尊心というのは、自分の行為や存在自体を、いいとか悪いとか評価することに関係します。いい・悪いの評価というのは相対的なものなので、どうしても人と比較して、劣等感や優越感を抱いたりしがちな上、自分の価値を見定めるにあたり、人の評価を気にしてしまうということも起こってきます。

そもそも、人間の価値というのは、人が判断して決めること自体、不可能であり、無意味です。人の評価を自分の価値基準にするのは、とても不自由だし、ばかばかしいことだと私は思います。

これに対し、自己への思いやりとは、いい・悪いという評価をせず、自分のすべてをまるごと受け入れて、自分に対して理解と慈しみを抱くということ。確かに、自尊心よりも自己への思いやりを持つほうが、心が満たされて、ずっと建設的に生きていけるでしょう。

そして、自分に思いやりを持つことができる人は、人に対しても楽に思いやりを持つことができるので、幸せな人間関係を築いていけるものだと思います。

 

(参考資料:Worden, T. (2014).  The Neuroscience of Self & Self-Acceptance: Brain-Based Strategies for Adressing Entrenched Guilt & Shame, PESI Webcast Seminar)

                                                                                                                        (Chika)

 

 

 

 

 

 

 

カウンセリングを勉強してよかったこと

カウンセリングを勉強していよかったと思うこと、それは、ことあるごとに、自分にもカウンセリングのスキルを適用するので、気持ちを切り替えるのがうまくなったことだと思います。

私は、自分のことを、特別にネガティブ思考の人間だとは思わないですが、特別に前向きな人間でもないと思っています。腹が立つことも、不安に思うことも、逃げたくなることも、たまには気分が落ち込むことも、普通にあります。

でも、あんまり引きずらないほうだとは思っています。つまり、わりと切り替えが早い(つもりでいる)。

だいたい、かなり落ち込んでも、長くて1~2日で回復して、気分が治った後は、

「え~と、そういえば、なんで落ち込んでたっけ。」

と、原因が思い出せないことが多いくらいです。(←単に物忘れがひどいだけか。最近、今日の晩ごはん、何食べたかも思い出せないし。)

そして、これは、自動的に気分が切り替わるのではなく、考えてみると、意識的に切り替えていることが多い気がします。

例えば、

「あ、今、あのことに対して腹が立っているな。だったら、すぐに反応するのはやめよう。怒りは数分で静まるはずだから、しばらくほかのことをして、冷静になってから、さっきのことに戻ろう。(←怒りの感情にまかせて行動すると、ろくなことにならないのを知っているから)」

とか、

「あ、自分、今、あの問題を怖がって、逃げたいと思っているな。ここで逃げたら、後でもっとしんどくなるから、あえて今、ぶつかっておこう。(←怖いものは、避ければ避けるほど、怖さが増すことを知っているから)」

とか、

「今、心身にストレスがたまってきているな。意識的に腹式呼吸して、酸素をたくさん吸おう。でないと、このままだと、ストレス性の肩こりと頭痛が起こるから。(←呼吸は、そのときの気分を切り替えるのに一番手っ取早い方法。浅い呼吸だと、頭に酸素が廻らなくなるので、頭痛がしたり、クリアにものごとが考えられなくなる。)」

などなど。

基本、自分の心の状態に敏感になって、自分の内面で起こっていることに注意深くなると、自分の心をコントロールすることが容易になります。

まあ、アメリカの大学院でのカウンセリングの勉強は大変で、朝から晩まで土日もそっちのけで、時にはご飯を食べる暇もなく、3年間勉強しまくりの忙しい日々だったのですが、こうして、自分に役立っているっていうだけでも、頑張った甲斐はあったなあと思います。                                                                                                                                                   (Chika)

 

       

 

ねこのミミをマッサージ中。

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セラピストのコントロールの問題について

心理セラピーでは、他の多くの治療行為の場と同様、クライアントとセラピストの間に、一種の力関係が生じます。

もちろん、人としての立場は平等で、どちらが偉いということは決してありません。

けれども、心理セラピーは、クライアントが自分の悩みを赤裸々に打ち明け、いわば弱いところを見せる場なので、どうしても、セラピストの方が立場的に強くなり、パワーを得やすい状況になります。弱みを見せて、頼っているほうが、頼られているほうに頭が上がらなくなる傾向になりやすいということです。

セラピストが無意識のうちに権力を行使してクライアントを利用したり、クライアントから搾取することを防ぐために、アメリカの心理カウンセラーの倫理経典には、セラピストがクライアントから物を買ったり、取引したりしてはならない(セラピストがクライアントのビジネスの顧客になってはいけない)、私的な関係(友人、恋人など)を築いてはいけない、という厳しいルールが設けられています。

セラピストがクライアントとの間に明確な境界線を引くことは必須です。そうしなければ、客観的にクライアントの問題を見ることができず、結果として、クライアントを助けることもできなくなります。境界線があいまいだと、クライアントの問題に心理的に影響されてしまったり、クライアントの感情を自分の感情と混同してしまったりして、効果的なセラピーができなくなります。ちなみに、この理由から、心理セラピストが知人、友人、家族にセラピーを行うことは禁じられています。

まだアメリカにいたころ、私は、第一線で長く活躍してきた心理セラピストの、こんな言葉に接する機会がありました。

「セラピストの中には、パワーがほしくて、クライアントをコントロールする人が、山ほどいる。」

残念ながら、私もそれはよく見聞きすることであり、事実だと思います。

例えば、

「あなたは、ここが悪い。だから、こうしなければならない/これをやってはいけない/こうすべきだ」等、クライアント本人の話を聞かないで決めつけたり、一方的に指示してきたり、自分の意見や価値観を押し付けてくる人。クライアントの自由意思を尊重しない人。

あるいは、

「私が治してあげる。」

「私のいうことを聞けば間違いがない」

「ほかの人に診てもらったらだめだ。」

「私を信じなさい。」

等を口にするセラピストも、コントロールの問題を抱えている可能性が高いと思います。

私が治してあげる、という医者やセラピストは、個人的には勘違いをしていると思うので、避けたほうが無難だと思います。治癒力を持っているのは患者やクライアント本人であり、医者やセラピストの役目は、それを引き出すこと。実際、クライアント本人が治りたくないと言えば、私たちは何もすることができません。それなのに、自分に治す力があると言うのは、ちょっと違うと私は思います。

そもそも、本当にすごい人というのは、決して自分のことをすごいと言ったりはしません。優れた人であればあるほど、必ず謙虚なものです。そういう人は、自分で自分を満たす方法を知っているので、他からパワーを獲得する必要がなく、したがって、名声や地位にとらわれる必要がありません。なので、クライアントをコントロールしてパワーを獲得しようとしたりもしません。

ただ、パワーの問題を抱えているセラピストのほとんどは、クライアントを故意にコントロールしようとしているのではないと思います。人をコントロールすることにより、パワーを得て、強くなったように感じて、自分を満たそうとする人の多くは、無意識でそれを行いますから。

いずれにせよ、人間、誰でもエネルギーを吸い取られるのは嫌だし、コントロールされるのは嫌なものです。心の奥底では、誰もがみんな、自分の自由意思を尊重してほしいと思っています。だから、権力を利用して、自由意思に反した押しつけをしようとする人に合うと、私たちは通常、反発を感じます。(共依存の人は、最初は気づくのが遅れるかもしれませんが、やっぱり最終的には嫌になるはずです。)

なので、最終的には、クライアントはコントロール欲求の強いセラピストからは、離れて行ってしまうものですが、その前に、クライアントが傷つく体験を余儀なくされるということは、とても遺憾に思います。すでに心に傷を負っていて、無防備な状態で助けを求めに来ている人たちであるから、なおさら・・・。

セラピストも医者も完璧な人間ではないので、間違うことはありますし、力が足りないということもあり得ます。治療家や施術者の言うことが絶対ということはありません。

専門的知識がある人だから、「立場が上の人」だから(初めに書いたように、本当は、人間として立場が上とか下ということはありません)といって、その人の言葉を鵜呑みにする必要はないのです。クライアントは、自分自身の感性を信じて識別し、自らを尊重して、最善の道を選択してほしいと思います。

 

                                               (Chika)

 

 

 

 

 

精神集中のコツ

首を上げて、視線を上に向けている時、意識は自由にさまよいだします。

視線を上に向けると、視覚イメージしやすくなるので、過去の情景を思い出したり、イマジネーションを使って何かをヴィジョンとして描き出したりしているとき、人は自然にこのポジションを取ります。

逆に、神経を集中させたかったら、首の後ろが伸びるように、うつむき加減になり、視線をやや下向きにします。

こうすると、意識は自分の内側に向かいやすくなり、ふわふわ漂うのをやめて、一点に集中しやすくなります。なので、瞑想をするときなどは、このポジションを取るといいと思います。

気持ちが浮ついている時や、落ち着かない時は、左右の鎖骨が落ち合う中心部分にあるくぼみに、中指を触れる程度に軽く当てて、そのかすかな圧を感じてみてください。

不思議と気持ちがリラックスするのが感じられるかと思います。

 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                      (Chika)

 

 

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本当の自分に還る

ゲシュタルト療法を編み出したドイツの精神科医、フリッツ・パールズは、精神疾患に対してホリスティックな見解を示した人です。

パールズは、人は本来、全き存在であり、心の不調とは、本来、統合されて1つにまとまっているべきものが、部分的に分離したため、機能不全に陥った状態であると考えました。

自然には恒常性(ホメオスタシス)があり、変化が起こってバランスが崩れたときに、調和を回復して、再び元あるべき状態に戻ろうとする働きが起こります。人間の精神にも、同様に、分離して離れてしまった部分を再統合して、本来あるべき完全で調和のとれた状態に戻ろうとする働きがあると、パールズは考えました。

私は、大学院でゲシュタルト療法を習ったときは、これがどういうことか、今一つ、ピンときませんでした。

けれども、実際に現場に出て、臨床経験を積めば積むほど、パールズの深い洞察が、心という目に見えないものを説明するにあたり、非常に的を得ていることを実感するようになりました。

人は、ごく幼いころは、本来あるべき、全き存在に近い状態なのだと思います。

小さい子供は、割合、心のままに生きています。感じたことを素直にありのまま表現して、悲しかったら泣き、うれしかったら笑い、思ったことを口に出します。過去をいつまでも思い煩うことはなく、未来のことを不安に感じることもなく、現在に生きているので、今、目の前にあることに純粋な興味を抱き、没頭し、楽しむことができます。

子供は、起こった変化に自然に反応するがゆえ、すぐにバランスを回復して、本来あるべき状態に戻ることができます。なので、感情的な淀みというのものを持ちにくく、例えば、怒りは感じても、恨みを抱くことはあまりありません。

けれども、人は、成長するにつれ、社会や周囲の環境に適応するため、自分を偽ったり、否定したりすることをおぼえてしまいます。本来の純粋な欲求ではなく、人や社会の期待に応えるため、あるいは周りから攻撃されて傷つかないように、行動や思考や感情を制限するようになっていきます。

自分の身を守るため、周りに迎合するために、本当は言いたくないこと、したくないことを、言ったりしたりしてしまう。そして、自分の本当の思いはなかったことにして、自分から切り離してしまう。本当は辛いのに、辛くないふりをする。辛いと叫んでいる心の一部は、切り離してしまう。

それを繰り返すうちに、全き存在だった自分は、分断化され、機能不全に陥っていきます。

完全な自分としてではなく、自分の一部分を切り離して生きていると、100%で生きていない分、パワーダウンして気力が減少してしまいます。また、エネルギーがうまく全体に回っていないので、アンバランスになり、どこかにひずみが生まれます。

結果として、うつになったり、感情の起伏が激しくなって怒りを抑えられなくなったりする。本来自分に属している部分を分離しつづけるのは、実はとてもエネルギーを消耗する作業なので、心が疲れてくる。潜在的にはその状態はよくない、なんかしなければならないと知っているので、慢性的な不安にさいなまれる。こういったことが、起こってきます。

フリッツ・パールズは、本来の全き存在に戻ることを阻害している、自分の中の切り離された部分、表現されずに自分の中に取り残された感情のことを「unfinished business(未完成の仕事)」と呼びました。

そして、この部分にちゃんと気つき、満たしてあげれば、分離された自己の一部は再統合され、自分に還ってくる、それにより、本来あるべき完全な状態に近づくことができる、と考えました。

実際、私は、セッションの中で、ゲシュタルト療法を使うことが少なくないのですが、それによって分断されていたものが再統合された場合、その人は、やはり、おしなべて、力が戻ったと感じるようです。この場合の力とは、具体的には、気力とか活力、自信などの、自分の中のパワーのことです。

また、感情的な停滞がなくなり、感情エネルギーが循環するようになるという目に見えない変化は、マイナスの感情にとらわれなくなり、短期間で切り替えられるようになる、という感覚として、実感されるようです。

ゲシュタルト療法は、自分の本質をそのまま表現すること、自分自身とちゃんとつながって生きることの大切さを教えてくれています。そのためには、自分の中に、否定してしまっている部分、滞っている部分があれば、その存在をまず認め、それから、受け入れてあげること。そして、その部分が本当は何を欲しているか、耳を傾けてあげ、満たしてあげること。

これがちゃんとできれば、unfinished business(未完成の仕事)はfinished(完成)となり、奪われていたパワーを取り戻し、本来の完全な自分に還ることができる。そうなるほどに、人は、持っている潜在能力をより多く発揮して、より、生き生きと生きることができるのだと思います。

                                       (Chika)

 

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パニック発作を軽減するライフスタイル

パニック発作に悩まされている方は、大勢いらっしゃると思います。

発作が実際に起きたとき、起きそうなときの対処法というのはありますが、それとは別に、発作を起こりにくくするために、普段のライフスタイルを変えていく、というのは、有効な手段だと思います。

どのように変えていけばいいか、ポイントを5つ挙げて、簡単に説明していきたいと思います。

 

1.普段から、深くリラックスする時間を、習慣的に持つ

深くリラックスするというのは、ひっきりない頭のおしゃべりをやめて、空っぽの状態にし、ただ、そこに在る状態、存在している状態を感じる時間です。呼吸法や瞑想、静かな音楽を聴く、自然の音に耳を傾ける、アロマを使う、キャンドルの炎を見つめる等、その状態を作り出すためのサポートツールは、色々あると思います。例えば呼吸法だと、実際に脳が信号を伝えて、体全体がリラックス状態に至るまで、呼吸法を始めてから4分かかるという研究結果があります。少なくとも5分以上、できれば15分くらいは時間を取って続ける方がいいと思います。リラクゼーションは、蓄積効果があるので、たまに長時間するよりは、少しの時間でも、毎日続けることにより、普段から落ち着きを得やすく、パニックが起こりにくい体質になっていくはずです。

 

2.規則正しく運動する

運動は、体にたまったストレスを発散させるために、有効な手段です。心身を興奮状態に導くストレスホルモンであるアドレナリンは、体を動かすことによって、減少させることができます。体を動かすことで、余分なエネルギーを消費しリラックスすると、体と連動している心もリラックスします。

 

3.刺激物をさける(特に、カフェイン、ニコチン、砂糖)

カフェインとニコチンは、体を興奮状態に導く刺激物で、不安症状を悪化させます。カフェインは、コーヒーだけではなく、多くの種類のお茶、コーラ製品、チョコレート、薬局の薬等に含まれています。カフェインとニコチンを控えると、不安症状が軽減するということは、よくあります。また、砂糖については、大量に摂取した後、急激に血糖値が下がり、低血糖になったとき、パニック発作と同様の状態になります。パニック症状の悪化を避けるために、砂糖を摂りすぎないように気をつけましょう。

 

4.自分の気持ちを認め、表現することを学ぶ(特に、怒りと悲しみの感情)

怒りや悲しみなどの、いわゆる否定的な感情を表現せず、抑圧する傾向にあると、気づかないうちに、漠然とした慢性的不安感を持ちやすくなります。風船が膨らむと、最後には空気圧で爆発しそうになるように、感情も、無視したり押さえつけたりしてて外に出さないでいると、だんだん内側からのプレッシャーが強まり、外にでようと暴れ出します。原因不明のパニック障害に苦しむ方を見ていると、長年にわたって無理に押さえつけた感情エネルギーがどこかに蓄積している場合が少なくないように思います。普段から、自分の気持ちにちゃんと気づいてあげ、それを感じて表現してあげる(悲しいときは泣くなど)ことは、慢性的な不安を抱えないために、大切なポイントだと思います。

 

5.より穏やかで、人生を受け入れるようなセルフ・トークとコア・ビリーフを採りいれる

セルフ・トークというのは、心のつぶやきとか、頭の中のおしゃべりのことです。これは無意識のうちに、ほぼ自動的に湧き起こってくるので、意識してキャッチしないと、通常、気づかないものです。不安症状があったり、うつ状態の人は、セルフ・トークが「~したらどうしよう」「どうせ~だ」などと、否定的な言葉づかいをしている場合が多いです。コア・ビリーフ(核となる信念)は、セルフ・トークの出所となっているものです。いわば、自分の意識の奥深くにある、「人生とは~である」「人とは~である」「自分とは~である」といった信念で、これが歪んでいたり、否定的だったりすると、落ち込みや不安、怒りといった、いわゆる否定的な感情を持ちやすくなります。セルフ・トークやコア・ビリーフを、もっと自分が生きやすくなるようなものに変えていくと、不安にとらわれにくくなり、パニック発作も起きにくくなっていくと思います。

 

以上、パニック発作になりにくいライフスタイルを、5項目ご紹介しました。人によって、どの項目を重点的に改善すればいいかは、異なると思いますが、これは、パニック発作のある人だけではなく、より不安になりにくい健康な心をもつために、すべての人に役立つポイントだと思います。よかったら、できるものだけでも、実践してみてください。

 

(参考文献:Bourne, E. J. (2000) The Anxiety and Phobia Workbook.  CA:  New Harbinger.)

 

 

 

                                                                                                                                    (Chika)

 

 


 

 

 

 

 

 

うつの正体を突き止める

うつは、「閉じ込められた感情」であるといわれます。

なんらかの感情が、外に出られずに、水面下で滞っている状態。

特に、悲しみや怒りを抑圧すると、気分が落ち込んで、うつに転じるといわれます。

涙を流して悲しむという行為は、心の痛みを解放するために、とても有効な手段です。

何か大切なものを失ったときに悲しむのは、自然なことだし、自分を癒やすための行為なので、必要なことでもあります。

もし、思い当たる喪失がないのであれば、なにに怒っているだろう、と自問してみるといいかもしれません。

怒りは、批判や攻撃が、自分の外に向けられている状態、うつは、批判や攻撃が、自分自身に向けられている状態なので。

大切なのは、まわりや自分を批判したり攻撃したりすることではなく、原因となっている自分の気持ちをちゃんと突き止め、感じてあげ、癒してあげることだと思います。                                                                                                                                                                                                    (Chika)

 

 

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新しいセミナー企画

現在、新しいセミナーを企画中です。(今のところ、予定は盛岡のみですが。)

今度のテーマは、感情について。

特にマイナス感情とか、ネガティブな感情といわれるものについて、その上手な扱い方、癒し方を詳しくみていこうと思っています。

一つだけいうと、感情を癒やすためには、それを否定したり、無理に変えたり、見ないふりをしたりしないで、ちゃんと受け入れて、認めて、つながってあげるということ。

切り離したり、押しやったり、抑制してしまった感情は、よけいに大きくなり、手が付けられなくなって、いずれまた戻ってきます。そして、戻ってきたときには、もっと厄介な扱いにくいしろものになっています。

感情を分離したり否定するとういことは、自分の一部を分離させたり否定するということ。

感情は、自分の中に取り入れ、統合してあげてはじめて、消化(昇華)され、消えていくものです。

ネガティブな感情とちゃんと向きあい、つながってあげることができた人は、その感情を敵ではなく味方につけることができるので、自分を癒すだけでなく、さらにパワーアップして、前に進むことができるのだと思います。

 

                                                                                  (Chika)

 

 

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