盛岡心理カウンセリング・ハミングバード

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09日

幼少期の親子関係の重要性について

人間の発達において、先天的なものと生後の養育、気質と環境のどちらがより大きな影響を及ぼすかを調べるため、アメリカのミネソタ州で長期的な研究が行われたことがありました。この研究は、Minnesota Longitudinal Study of Risk and Adaptationといって、1975年よりおよそ30年かけて、180人の子供とその家族を詳細に調査するという大規模なものでしたが、その結果、次のようなことが明らかになりました。

子供が思春期に深刻な問題行動を起こすようになるかどうかは、母親の性格、子供の先天異常、IQ、子供自身の気質とは、あまり関係ない。カギになるのは親子関係であり、親がどう子供のことを思い、どのように接したかである。

幼児期、継続的によく世話をされた子供は、心身の統制が取れた子供へと成長し、不安定な子育てを受けた子供は、常に高ぶった生理状態になる。結果として、不安定な親の元に育った子供は、しばしば、承認を求めてうるさく騒いだり、ちょっとうまくいかないと強い苛立ちを覚えたりするようになる。継続的な高ぶりは慢性的な不安を生み出し、子供は大きくなると、神経質で冒険心に乏しい人になる。

幼児期にネグレクトされたり、過酷な環境で育った子供は、学校で問題行動を起こすようになり、他の子とトラブルを起こしたり、他の人の悩みに対する思いやりを持てないようになる。

私自身は、環境がすべてを決定するとは思っていないので、上記の研究結果はあくまでも一般的傾向であり、子供がどういう成長の仕方をするかには、生まれつきの気質も大きな役割を果たすことがあると思うのですが、確かに子供時代の親子関係が人の人生に多大な影響を与えるということは否めない事実だと思います。

私が見た中でいうと、不安定で一貫性のない子育てを受けた子供は、成長する過程で、強い不安、または怒りを持ち続けることが多いようです。

不安と怒り、どちらが強いかというのは、その子供の生まれつきの気質によります。特に男の子は、怒りが攻撃性を帯びる場合が多いように思いましたが、これはアメリカの臨床経験の観察によるもので、日本では違うかもしれません。(日本では子供のクライアントをまだほとんど扱ったことがないので、よくわかりません。)

例えば、ある10歳の男の子は、学校で「今度、銃を持ってきて、お前らみんな皆殺しにしてやる」と暴言を吐き、手におえないといわれてカウンセリングを受けていましたが、この子は、お母さんがアルコール依存で子育てができず、父親も不在で、お祖父さんに育てられていたのでした。強がってはいるけれど、本当は心の底で、母親のことをとても心配し、傷ついているのが、見ていてわかりました。

女の子にも似たような例がありました。小学校で問題行動を起こし、クラスメートとうまくいかずに、カウンセリングに連れてこられた子だったのですが、この子はとにかく怒りが強く、心を閉ざしていて、口をきかない。その時は私ではない別のセラピストが担当していたのですが、アートセラピーで絵を描くときだけ、夢中になって描くのだそうです。しばらくたって来なくなったこの子は、数年後、また問題を起こして、カウンセリングに連れてこられ、今度は私の担当になりました。10代半ばに成長した彼女は、以前よりも素直で穏やかになっており、私にこう打ち明けました。

「小学校のころは、私、いつも怒っていて、誰にでも攻撃的だった。とても悲しかったから、誰とも口をききたくなかったの。」

この子にも、アルコール依存で子育てはおろか、自分の世話もできない母親がいたのですが、彼女もやっぱり、母親のことをとても心配しており、だけど自分の手では母親を助けようがなく、無力感と深い哀しみに苛まれていたのでした。彼女の怒りも、前述の男の子と同様、抑うつ状態が転じたものだったと思います。

もしも、親が一貫した愛情をもって安定した子育てをするならば、例え物質的には多少の不自由があったとしても、適切な問題解決能力を備え、安定した心を持った大人が育ちます。そうなれば、結果として社会問題の多くが改善されるのではないだろうかと思います。

この研究結果を見て、社会における子育ての大切さを再認識させられた気がしました。              (Chika)

 

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