盛岡心理カウンセリング・ハミングバード

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メンタルヘルス

共依存関係のしくみ(3)

(1)(2)のつづきです。

子供は成長するにつれて、感情操作タイプの親の親役を務めるようになる(役割の逆転)。自分の感情を抑制し、感情操作タイプの自信を増強する手助けをする。また、手間をかけさせず安全な存在になるよう、早々と自立し、聴き上手で、我慢強く、慈悲深くて、高い共感力を持つようになる。感情操作タイプの親の自慢になるよう、無理して頑張るようにもなる。こうして、感情操作タイプのニーズを満たす、よきパートナーとなる。

その結果、その子供は、下記のような特徴を帯びるようになる。

  • 条件付きで愛する人を、無条件に愛する
  • 対人関係において、自分を持たなくなる
  • 無私無欲で、相手のことを考える
  • 利己的で、自己中心的な人たちの間にいて、安心する(親しみを感じる)
  • 人を感情から救おうとする
  • 「自己犠牲は美徳だ」「求めること、欲することは利己的な行為だ」「自立は価値あることだ」等、現実を歪曲して考える
  • 自分を偽り、感情を殺す

この子供は、大人になったとき、条件付きの愛を受け入れ、虐待的で有害な人々の中に「善」を見い出し、その行為を正当化するようになる。また、虐待やネグレクトを愛だと勘違いし、誠実とか献身という言葉の元に、虐待を許すようになる。

(つづく)

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共依存関係のしくみ(2)

前記事のつづきです。)

共依存タイプの起源は、子供時代にさかのぼる。

共依存タイプの人は、アルコールを含む薬物依存、精神障害、子供の虐待やネグレクト、慢性的な身体的・精神的トラウマを抱える家庭に育つ。

共依存タイプの人は、感情操作タイプの親に育てられる。

感情操作タイプの親は、子供の情緒的なニーズを無視し、自分自身の子供時代の傷を子供に癒やさせようとする。感情操作タイプの親は、子供が自分の欲求を満たさなければ、無視したり虐待したりする。機嫌がよく、喜んだときだけ、子供の世話をする。感情操作タイプの親は、自分が完ぺきで、能力があると感じているときは、子供の欲求を満たしてあげたい気分になる。

こうして、条件付きで愛された感情操作タイプの子供は、人を喜ばせることで環境に適応することを覚え、共依存への道を歩む。

うまく環境に適応するためには、素早くサインを感じ取り、正確に反応しなければならない。子供は、感情操作タイプの気分を読み取るアンテナを発達させる。そして、無視されたり虐待されたり、捨てられたりしないために、感情操作タイプの怒りを何としてでも避けようとして、感情の動きを予測するようになり、過剰に敏感になる。

こうして、共依存タイプは、幸せでないときに幸せなふりをしたり、人を満足させるために自分の欲求を我慢する達人になっていく。

怒りや悲しみを感じることは、感情操作タイプの恥を誘発させ、自分に対する激しい怒りを招く可能性があり、危険なので、自分の感情を抑制したり、制御するようになる。

怖いときに平気なふりをしたり、怒っているときに満足しているふりをしたり、好ましくない状況で愛らしいふりをしたりと、不自然な期待に応えようとする。

結果として、未来の共依存である子供たちは、早く大人になりすぎる。大人や兄弟姉妹の世話係になり、危機的な状況にあって冷静にふるまい、自分が話したいときに人の話を聞き、争いを仲裁しようとし、感情操作タイプの親を満足させるために、子供時代を犠牲にする。

(つづく)

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共依存関係のしくみ(1)

Ross A. Rosenbergというアメリカのサイコセラピストが、 共依存について、面白い見解を述べています。彼のセオリーは、100%当てはまるとは思わないけれど、8割がた当たっていると思うし、日本でよくいわれている、「アダルトチルドレン」が形成されるプロセスを理解する上でも、役立つ概念だと思うので、何回かにわけてシェアします。

共依存の人(Codependents)と、他者の感情を操るのが上手な人(Manipulators)は、磁石のように魅かれ合い、離れられなくなる。この二つのタイプは、繰り返し似たような関係を築き、変化に抵抗し、機能不全または病的なカップルとなる。共依存タイプと感情操作タイプは、お互いに補い合い、二人で一つの完全な形をなす。

共依存タイプと感情操作タイプの共通点は、

  • 一人でいるのが耐えられない
  • 無力で、関係を終わらせることができない

ということ。結果として、関係はずるずると長続きする。

共依存タイプの特徴:自己犠牲的で利他的。自分より相手の欲求を優先する。必要とされることに喜びを覚える。自尊心が低く、過剰に従順である。衝動的かつ過度に人の世話をしたがる。自分の問題を棚に上げて、人の問題を解決しようと奮闘する。境界線があいまいで、自分と人の境目がわからない。多くを望まない。感情を感じて表現するのが苦手。

感情操作タイプの特徴:自己中心的、利己的。自分の過ちを他者に投影し、周りを非難する。行動や思考に柔軟性がない。衝動的で、思考や感情をコントロールする力が乏しい。自己愛性人格障害、境界線人格障害、反社会的人格障害の3つの人格障害及び薬物依存症の人が、このタイプに属する。

共依存タイプと感情操作タイプは、出会ったとき、瞬間的に強く惹かれあい、あたかも理想の人と出会ったかのような陶酔感を覚える。

共依存タイプは感情操作タイプの、「強さ」と「自己決定力」、男っぽさ、攻撃性にひかれ、感情操作タイプは、共依存タイプの、忍耐強く自分の話を聴いてくれ、同情的で、人のせいにしても批判することなく受け入れてくれるところ、何をしても許してくれ、自分の痛みを癒やそうとしてくれるところに、魅力を覚える。(つづく)

 

 

 

 

 

 

 

うつ病の原因

うつ病というのは、直接的な原因はなんであれ、結局は、気持ちを心に閉じ込めてフタをしてしまっていることから起こるように思います。

なにか、辛いできごとがあったら、悲しんだり、落ち込んだりするのは、人間として当然です。そういう一時的な落ち込みは、うつ病とは呼びません。

悲しみや、怒りや、罪悪感などの、いわゆるマイナスの感情を長く閉じ込めて、外に出さないでいると、やがて感情エネルギーに滞りが起こり、「うつ病」という精神障害になるのだと思います。

感情は、感じて流すもの。そういえば、占星術では、感情を表すのは、水の星座ですね。感情は、水のように、滞らずに流れていてこそ、きれいでいられるもの。流れをストップしたら、淀んだ水になって、にごってしまいます。

目の前の、川の水の一点を見ていると、向こうから木の葉などの漂流物がやってきたとしても、視界に入った後、やがては流れさっていきますね。それと一緒で、本来、悲しみや苦しみ、喜びなどの感情というのは、ダムのようにせき止めるのでなければ、やってきては、いってしまうもので、永遠にとどまるものではありません。

もって悪い感情というのは、本来ありません。どんな感情を持ったとしても、怖がらないで、例え痛くても、自分の感情を感じて、ちゃんとそこにあることを認めてあげること。受け入れてあげること。

そして、信頼できる人に話すなり、日記に書くなり、絵が得意なら、気持ちをアートにするなりして、表に出してあげること。または、ドラマや映画や本などで、自分と似たような境遇のお話に触れることにより、心が動いて、感情を表面化することができるかもしれません。

うつ病はよくなる病気です。うつ状態というのは、本来、人間にとって不自然な状態だからです。閉じ込めて滞らせないで、感じて、安全な形で表現し、流す。これがうつ状態を回復させる秘訣だと思います。

 

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うつ病は投薬と休息で治るか

日本の精神医療では、うつ病の治療は投薬と休息が基本といわれているらしいですね。(ちなみに、アメリカではそんなことは聞いたことがありません。アメリカは心理療法がとてもさかんなので、心理療法プラス投薬治療がもっとも効果的だと言われていました。)

これから書くことは、あくまでも私の個人的な考えなので、その点をご了承ください。

うつが投薬と休息で治るかどうかと聞かれたら、私は、症状の重さにもよるが、それだけでは治らない、または悪化するケースは多いと思う、と答えます。

もともと、うつ病(正式名称は大うつ病)というよりは適応障害のうつタイプで、何らかのストレスによる一時的な気持ちの落ち込みである場合、そして、もともと比較的健康な心をもっている人の場合は、治る可能性が高いかもしれません。

けれど、本当に大うつ病の診断基準を満たしており、症状が比較的重い場合は、投薬と休息だけでは、いつまでたっても薬を飲み続け、休み続けなければならないことになる。さらに、仕事をやめるなどして、なにもせずに家でゴロゴロし続けていれば、もっと症状がひどくなる場合も少なくないと思います。(そういう人を、私はたくさん見てきました。)

誤解してほしくないのは、休息するのが悪いといっているのではありません。今まで、無理をしすぎてきた人は、休息する必要があると思います。ただ、体を休めることはできても、心をほんとうに休めることができるうつの人は少ないと思います。だから、ただ活動を休止するだけでは不十分だと思います。

ちなみに、薬は、私はあまりおすすめしませんが、死にたくなる、または他人を傷つけたくなるほど症状がひどい場合はやむを得ないと思います。でも、それ以外は、薬依存症になる危険性があること、自然の感情が麻痺して心の回復がおくれてしまうこと、肝臓や腎臓を傷め、生体エネルギーを大幅に損なうこと、副作用がこわいことなどから、個人的にはすすめられません。

実際、長年、薬に依存したあげく、いつも濁ったどんよりした表情で、ゾンビのようになってしまった人たちを、私はたくさん知っています。病院の薬を飲みすぎたショックで亡くなった方もおられました。そういうことが多くなってきたため、最近、アメリカでは、医師が訴えられるのを恐れて、依存性のあるベンゾ系の抗不安薬などは、患者に求められても処方しなくなりました。(日本では、まだまだ、ベンゾ系の薬は簡単に処方されていますが。)

では、どうやったらうつが治るかというと、やり方は人それぞれなのですが、ひとことでいうなら、うつになった原因を探って、それを是正することだと思います。

原因不明のうつと、よくいうけれど、どんな症状であっても、かならず原因があります。ほんとうに原因のない精神障害や疾患のクライアントさんに、私はまだ会ったことがありません。

心のバランスが崩れたとき、その原因を正さずして、ただ休んだり、薬で感覚を鈍らせたりするだけで、どうやってよくなるのか、私にはわかりません。

どんな症状でもそうだけれど、落ち込みとか、不安などの症状は、心が本来あるべき状態からズレているから、それを正しなさい、もしくは癒しなさいというサインだと思います。

ピンチはチャンスとはよく言ったもので、今、苦しくて辛い状態にあっても、そこには、必ず、幸せに向かうためのヒントが隠れているのだと思います。

 

パニック障害が起こるしくみ

パニック障害に苦しんでいる方は、たくさんいらっしゃると思います。今回は、パニック障害が起こるしくみについて、少しお話したいと思います。

簡単にいうと、たいていのパニック障害は、「実際には存在しない恐怖に対して、あたかもその恐怖が今、起こっているかのように、体が反応する」ことにより、起こります。

例えば、道を歩いていて、向こうからゴリラがやってきたら、たいていの人は、パニックになると思います。そして、身を守るために、筋肉は収縮して硬くなり、動悸は激しくなり、呼吸も早くなり、発汗するでしょう。これは、体内のアドレナリンが、自分を危険にさらすかもしれない対象物を認識したことにより、一挙に放出されたことために起こる反応です。

この体の反応は、Fight or Flight(戦うか、逃げるか)といわれる、防衛反応です。この状況で身を守るためは、ゴリラと戦うか、逃げるかしなければならず、瞬発力を最大限に発揮して、すばやく機敏に動けるように、体が準備をするわけですね。

もし、恐怖が実在するのであれば、その体の反応(激しい動悸、過呼吸、発汗、筋肉の収縮等)は、恐怖の対象物から身を守ろうとする、防衛反応として、必要不可欠なものですが、問題は、その反応が、頭が作り出した恐怖により、不必要に起こってしまうことです。

例えば、過去に起こった恐怖の記憶により、「またそうなったら、どうしよう。」と思ってしまう。その思考だけで、体の反応を起こしてしまうわけです。そして、アドレナリンを放出させてしまい、その肉体反応を捉えて、ますます、「ああ、動悸が激しくなってきた。息が苦しい。このまま、倒れるかもしれない。もしかすると、死ぬかもしれない。」と、ますます、Fight or Flightの肉体反応を煽り立てるような思考を、増幅させてしまうわけです。

このとき、恐怖が実在しないことを、再度意識することは、とても大切です。頭の中のおしゃべり(専門用語ではセルフ・トークといいます)を、意識的に言い換えてあげることも、パニックには効果的です。例えば、死ぬかもしれない⇒これは、ただ、体が間違えてアドレナリンを出しているだけだ。私は絶対に大丈夫だ、など。(パニック障害で死ぬことはありませんので、安心してください。)

それから、逆説的に聞こえるかもしれませんが、もう一つ大事なのは、不快な思考を無理やり押しのけようとして、抵抗しないこと。抵抗すると、かえって、押しのけようとする対象物は、強さを増し、パワフルになって押し返そうとするからです。このとき、抵抗するのをやめて、一度、その存在を頭の中で認めてあげてから、別のものに意識を移したほうが、うまくいきます。

呼吸をコントロールして、深くゆっくりした呼吸を心がけることは、最も大切です。

パニック障害については、もっとお話ししたいことがあるので、また、折を見て、書きたいと思います。

 

精神障害の診断について

うつ病(大うつ病)、躁うつ病(双極性障害)、統合失調症、アスペルガー等、精神科や心療内科で診断を受けたとき、からだの病気のように、こころの病気の申告をされたと思って、ショックを受ける方がいるかもしれません。また、今まで自分が苦められていた症状に名前がついて、安心される方も、中にはいるかもしれませんね。得体のしれないものより、正体がわかったほうが、恐怖心は薄れるものなので。

私は、アメリカで多くの精神障害のクライアントさんに診断を行っていましたが(アメリカでは資格のあるサイコセラピストなら診断書を書くことができます)、その経験を踏まえたうえで、こう言いたいと思います。「精神障害の診断名を気にしすぎないでください。」

第一に、精神医療は、身体の医療にくらべて、まだまだ発展途上です。

診断の際は、ICD-10と並ぶ精神障害の診断の手引書であるDSM-IV(The Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders IV) に基づいて病名を付けていましたが、この手引書、1952年のDSM-Iという初版では、精神障害の種類は106種類しかありませんでした。1968年に出版されたDSM-IIという改訂版では185種類、1980年に出版されたDSM-IIIは最初265種類だったのが、さらに1986年、DSM-III-Rという改訂版で297種類に増やされ、現在、使われているDSM-IV(1994年リリース)は365種類。要するに、心の病気の種類は、過去60年余りで3倍に増えているのです。(DSMの最新版は2013年5月に出版されたばかりのDSM-5ですが、まだ現場ではそれほど普及していないと思います。)これは、実際に世の中に心の病気が増えたのではなく、「こういう心の病気がある」と人間が定めた種類が増えたということです。 最新版のDSM-5では、日本で一時期盛んにいわれたアスペルガー障害が病名から外され、自閉症の領域に入れられるなど、今まであった病名がなくなったり、逆に新しい病名が付け加えられたりしています。

第二に、精神病や精神疾患の診断は、主観的なので、残念ながら、比較的信頼性に乏しいのです。

これはつまり、診断を下せる二人の専門家がいたとして、同じ患者さんを診て、同じ病名をつける可能性が、比較的低いということです。それぞれの専門家が、患者さんの症状のどこに注目するか、その状況をどう判断するかによって、うつ病と判断したり、PTSDと判断したり、ということが、実際、よくあります。なので、A病院の精神科に行ったときは双極性障害と言われたが、B心療内科で診てもらったら、統合失調症と言われ、C病院では大うつ病といわれた、などということも、ありえるわけです。そもそも、体の病気と違って、心という目に見えないものに診断を下すわけですから、ある程度主観に頼らざるを得ないのは、仕方がないことだとは思います。が、やはり、それは、一人の専門家の意見を鵜呑みにしないほうがいいという結果にもつながるわけです。

第三に、精神障害の診断は可変的です。

心の症状というのは変わりうるものなので、私がアメリカで仕事をしていたときは、クライアントさんの診断名は、理想的には3ヶ月ごとに見直すことが推進されていました。最初にはわからなかった症状があとで見つかって、比較的軽い精神障害である適応障害という診断がOCD(強迫観念症)に書き換えられたり、妄想性障害だと思っていたのが、妄想ではなく不安感が強いだけと判明したので、全般性不安障害に書き換えられたり。治療の末、PTSDの症状がなくなって病名が削除されたり、というのも、もちろんあります。要するに症状がなくなり、治ってしまえば、精神障害ではなくなるものなのです。一生付き合っていかなければならない精神病というのも、あるにはありますが、それほど多くはありません。

第四に、過剰診断というのがやっぱりあって、例えば双極性障害が過剰診断されやすいというのはよくいわれています。私の印象では、日本では特に、双極性障害に加えて、統合失調症や発達障害が過剰診断されているのではないかという気がします。

以上の理由で、「自分は、心の病気なんだ。〇〇病なんだ。」と、心配しすぎないこと、振り回されすぎないことは大事だと思います。(それから、できればセカンドオピニオンを得ることも。)自分は病気だと考えるよりも、今はこういう状態だけれど、それは変わりうるものだととらえることが大切だと思います。