盛岡心理カウンセリング・ハミングバード

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メンタルヘルス

メンタルヘルスの法則集

最近、ゆっくり記事を書く暇がなくて、ご無沙汰しています。

今日はカウンセリングの現場でよく目の当たりにする、一種の法則のようなものを、手短に書いてみます。

1)頭で考えすぎると行動力が衰える。

思考過多であれこれ考える人は、不安を生み出し、自分にストップをかけて動けなくなりがちです。

2)過去のことを考えすぎると鬱になり、未来のことを考えすぎると不安になる。

過去はすでに過ぎ去っていてもう変えられないので、無力感にとらわれやすい。無力感は抑うつ状態を生み出しやすい。まだ来ていない未来のことも、今は変えられない。変えられないことを何とかしようともがくと、焦燥感にとらわれ、不安になりやすい。唯一変えられる時制である現在にフォーカスするのが、最も効率的で健全な意識の持ち方です

3)依存すると支配される。

依存すると、依存の対象に自分をコントロールする力を与えてしまいます。たとえば、パチンコやお酒に依存すると、パチンコやお酒が自分を支配するようになる。それが自分の意識の中で大きな存在になり、やがてそれ中心の生活を送らなければならなくなってしまいます。対象が人でも同じ。誰かに依存すればするほど、その人は自分の中で力を持つようになり、その人の言動によって一喜一憂するようになる。そして、その人がいなければ幸せではなくなる。これでは自分で自分を幸せにすることができなくなってしまいます。

4)境界線がない人は依存したりされたりしやすく、人に影響されやすい。

境界線(=人と自分の境目が甘い人)は、自分の感情と人の感情を混同たり、人の問題に責任を負おうとしたり、逆に自分の問題を人に背負わせようとします。境界線がない人には「自分がない人」が多いです。自分は自分、人は人、という風に割り切り、自分の人生には自分で責任を持つ、人の人生は最終的にはその人がなんとかするしかない、と意識するように心がけると、境界線が引けるようになり、人の影響を受けにくくなります。そして、周囲の目を恐れず、適切に自己主張もできるようになっていくので、生きるのが楽になります。

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引きこもり生活が脳に及ぼす影響

最近、いわゆる「ひきこもりの若者」と話をする機会がよくあります。

それで気づいたことがあるので、少しシェアしたいと思います。

人にもよりますが、2~3年ならともかく、10年、15年と引きこもっていると、人は他者と普通に会話のややりとりをすること自体、できなくなってしまうようです。

会話というのは、こちらが投げかけた言葉に反応を返す、あるいはその逆をする、という言葉のキャッチボールによって成り立つものですが、それがまずできなくなるのです。

例えば、 「最近、雨が多いですね。」 と言われたら、 「本当ですね。」 とか、 「そうですね。でも暑さが和らぐのはいいですね。」 とか、自然に相手にフィードバックするのが、普通の会話のやりとりです。

ところが、長い間人と話すことをしないで来た人は、それができなくなってしまう。

まず、何かを聞いたとき、答えるのに人の何倍も時間がかかる。あるいは返事を返せない。逆に、向こうからこちらに言葉を投げかけることもできない。

先日、ある人と、ロールプレイで会話のやり取りの練習をしたのですが、終わった後、彼はこういいました。

「使っていない筋肉を急に使ったみたいだ。長い間ひきこもっていたから、普段使っていない脳を使って疲れた。」

それを聞いて、私ははっとしました。前頭葉が退化している。

前頭葉というのは、社会脳ともいわれていて、人と関わるときに使う脳です。人間が他の動物と大きく違うのは、この前頭葉が大きく発達している点で、ここは、人に対する共感、理性、論理思考などをつかさどります。ちなみに、爬虫類などの生物はこの部分が発達しておらず、生物的な本能をつかさどる後ろの方の脳(爬虫類脳ともいわれる)だけが活発です。

筋肉でも感覚器官でも脳でも、使わないと退化するもの。だから、生身の人間と関わることを何年も避けていると、関わること自体、できなくなっていくのでしょう。

引きこもっている間、よく家でゲームやインターネットなどをしている人がいますが、二次元レベルでの他者との関わりは、相手を目の前にして、全体の雰囲気を感覚で感じ取ってコミュニケーションするという関わりとは、まったく違います。よくゲーム脳といいますが、これは脳のごく限られた一部だけを過剰に使うことによって、脳のアンバランスをもたらすのだと思います。人と直接、接することは、前頭葉を活性化し発達させるのに必須なのだと思います。

 引きこもりの人たちと接していて感じる共通事項は、「回避」です。外に出られなくなった理由は人それぞれでしょうが、根底には「嫌なこと、辛いことを避けたい」という回避があるようです。

嫌なことを避けると、嫌なことに直面する機会は減るでしょうが、その代り、体験を避けることにより、脳も感覚器官も使わなくなって衰えるので、喜びを感じにくくなり、結果、いいことも起こりにくくなります。これは必然です。また、困難を避けることにより、困難に対する対処能力、苦悩耐性もなくなるので、普通の人が平気なことでも異常に辛く感じるようになります。最後に、嫌なことというのは生きていれば必ず起こるもので、避けきれるものではありません。心理的にいうと、物事は避ければ避けるほど怖くなものなので、免疫のない脆弱な精神の持ち主になりたくなければ、避けないほうが得策だと思います。

退化した筋肉は、リハビリをすることでもとに戻っていきます。脳も同じです。長年使わないで衰えた社会脳は、少しずつ人と関わり、コミュニケーションをとる訓練することにより、またスムーズに使えるようになります。

長年引きこもって人と話をしていない人は、まず、傷つく危険性が少ない、一時的な人との関わり(お店で買い物をする、電話で問い合わせをする、案内所で道を聞く等)からリハビリを始めてみてはいかがでしょうか。

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精神疾患の診断のあいまいさについて

精神疾患の診断名というのは、絶対的なものではありえません。つける側の見方によって変わりうるもの、患者の状態が変われば、必要に応じて変えるべきものです。

 

先日お会いした方は、20年以上統合失調症で服薬治療を続けていらっしゃいました。けれども、実際に症状があったのは、20年前の、とあるショックな出来事の直後のほんのしばらくの間だけ。その時は抑うつ状態で、言動がおかしかったり、悪口を言われているような幻聴があったりしたらしいのですが、以来ずっとお仕事をして、社会生活を送ってこられています。

 

日本の精神科医は、本当に簡単に統合失調症という深刻な病名をつけて、長期にわたり服薬治療を続けたがりますが、私ならこのケースには統合失調症という診断は下さないと思います。その当時の症状について、私はくわしいことは知りえないので、はっきりとは言えませんが、Major Depressive Disorder with Psychotic features(精神病性の特性をもつ大うつ病)のほうが、この方の場合、発症時の診断にふさわしい気がします。そして、私なら、ショックな出来事が及ぼしている心理的な影響を取り除くサポートをし、その後症状がなくなったら、診断名を変える、もしくは診断名自体、外すだろうと思います。(もちろん、私は精神科医ではないので、薬物治療自体できないというのもありますが。)

 

精神科医は、この方の症状は服薬によって抑えられているから、薬を飲み続けなければならないというでしょうが、実際のところ、回復したのち、薬をやめても症状は良好なまま変わらない人を、私はたくさん知っています。(また、悪い症状が、薬を飲んでも飲まなくても変わらない人も、たくさん知っています。こういう場合、個人的には、体が疲れたり、頭が働かなくなったりといった副作用がないだけ、薬を飲まないほうがいい気がします。)

 

もしかすると不必要、または誤った診断かもしれないのに、長い間、重い精神病のレッテルとともに生きてこなければならなかったこの方を、私は気の毒に思いました。

 

診断名というものがどうやってつけられるか、なぜつける側によって診断名が変わりうるか、診断名が患者にどういう影響を及ぼすかについて、私が常々から思っていることを、代弁してくれているかのような記述を、アメリカの精神科医であるBessel Van Der Kolk博士の著書、the Body Keeps the Scoreに見つけたので、下記に引用したいと思います。

 

我々がどのように患者の問題を定義し、診断を下すかによって、どのようなやり方で患者をケアするかが決まります。患者が精神治療を受ける過程で、5つ、6つのまったく異なる診断を下されることは、よくあることなのです。

 

もし医師が感情の起伏の激しさに注目するなら、患者は双極性障害(躁うつ病)と診断され、リチウムやバルプロエート(抗けいれん剤)を処方されるでしょう。もし専門家が患者の絶望感にもっとも強い印象を受けるなら、患者はうつ病に苦しんでいると言い渡され、抗鬱剤を与えられるでしょう。医師が患者の落ち着きのなさや注意力の欠如に注目するならば、ADHD(注意欠陥・多動性障害)とみなされて、リタリンその他の刺激剤で治療されるかもしれません。そして、もしたまたまクリニックのスタッフが過去のトラウマについて質問していたら、そして患者がその情報を打ち明ける気になっていたとしたら、その患者はPTSDの診断を受けるかもしれません。

 

これらの診断名は、いずれも完全に的外れというわけではなく、かといって、いずれの診断も、患者が誰なのか、何に苦しんでいるかを、意味のある言い方で表してはいません。

 

(中略)精神病の診断には深刻な因果関係があります。診断は治療を決定づけ、誤った治療は破滅的な結果を招く可能性があるということです。さらに、診断名のレッテルは残る生涯つきまとい、患者が自分自身をどう定義するかに深く影響を与えかねません。

 

(中略)これらの診断はいずれも、患者の多くに発現する並外れた才能や、困難な状況の中でなお持ち続ける創造的なエネルギーを、考慮に入れてはいません。

 

診断名がついている方は、便宜上つけられたその病気の名前に、必要以上に振り回されないでほしいと思います。私は、心の症状を「病気」ということに抵抗を覚えるのですが、仮に本当に 病気だったとしても、人=病気ではなく、Van Der Kolk博士がいうように、病気はその人という存在のごく一部でしかなく、人の可能性は病気を大きく上回るということを、忘れないでいてほしいと思います。

パニック症状の対処法(後半)

前記事に続いて、後半です。

 

8.即座に心地よさを得られる何かをする

 

・おいしい軽食や食事をとる(この場合、軽食は、糖質やジャンクフードではなく、炭水化物と蛋白質を含むものであること。)

・熱いシャワーを浴びる、お風呂でリラックスする

・アロマの香りを嗅ぐ

 

9.心地よさを感じられる人や状況を思い浮かべる

 

安心感を得られる人物や、平和な光景を頭に思い描いてみてください。日々のリラクセーションとして、日ごろから、心地よい光景を描く練習をしておけば、より効果的です。

 

10.「思考停止」をする

 

①深く息を吸って、「ストップ!」もしくは、「やめ!」と叫ぶ。まわりに人がいる場合は、心の中で叫ぶか、ストップサイン進入禁止を思い描く。

 

②必要なら、①を繰り返す

 

③不安な考えを、より穏やかで、自分を励ましてくれるような言葉に置き換える。

 

「これは、すぐに終わる。」

「大丈夫、パニックは危険なものではない。ただ、やり過ごして、不安感がおさまるのを待とう。」

「これは、恐怖感の対処法を学ぶ、いい機会だ。」

「この危険は、現実じゃなくて、頭の中で起こっているだけだ。本当は、なにも心配ない。」

 

等。

 

もし、「ストップ進入禁止!」と叫んでも、思考停止ができない場合は、手首にはめた輪ゴムをはじく、という方法もあります。

 

否定的な思考を一旦停止できたら、ゆっくり深く呼吸し、呼吸に注意を向けるのも、効果的な方法です。

 

11.腹式呼吸をする

 

腹式呼吸を、ゆっくり、規則正しく、3~4分間行えば、パニック発作を悪化させる過呼吸を抑制し、こわばった胸部の筋肉をほぐすことができます。

 

日ごろから、1日5分、腹式呼吸の練習を行うことにより、よりリラックスしやすい体質を作ることができます。(リラックスできる音楽をかけて行えば効果的です。)

 

12.マッスル(筋肉)リラクセーションを練習する

 

パニック時の不快感の多くは、筋肉の硬直によって起こります。マッスルリラクセーションとは、まず、筋肉をわざと硬直させてから緩めることにより、筋肉をリラックスさせる手法です。パニック発作初期の段階でこれを行うことで、「戦うか逃げるか(Fight or Flight)」の身体反応により筋肉が硬直する過程を逆行させ、パニックを抑える効果が期待できます。マッスルリラクセーションと腹式呼吸を組み合わせれば、より一層効果的です。

 

・こぶしを作って、手をぎゅっと握り締めてください。これを10秒間続けた後、10~20秒間、手を開いてリラックスさせてください。

 

・力こぶを作って、二頭筋を硬直させ、ゆるめる。以下、10秒間、力を込めた後、10~20秒間、筋肉を緩めてください。

 

・目を10秒間ほどぎゅっと閉じた後、10~20秒間、リラックスさせてください。

 

・ゆっくり頭を後ろにそらせて、首の後ろの筋肉を硬直させてください。このとき、首の後ろに意識を集中させます。10秒たったら、15~20秒間、今度はリラックスさせてください。

 

・両肩が耳につくくらい、できるだけ高くあげてください。10秒たったら、10~20秒間リラックスさせます。

 

・肩甲骨のストレッチを行います。肩甲骨が背中でくっつきあように、後ろに向かってそらせてください。10秒後、リラックスさせてください。

 

13.ポジティブな言葉を繰り返す

 

パニック発作の身体的な反応(第一段階の恐怖)は、突然やってくるかもしれませんが、この身体的な反応に対し、いかに感情的に反応するか(第二段階の恐怖)という部分は、パニックの症状に対して自分に何を言い聞かせるかによって決まります。もし、身体的な反応が、恐ろしくて耐え難いものだ、これはコントロールできない、死ぬかもしれない、と、自分に言い聞かせるならば、不安感は否応なしに増します。一方で、起こっていることを受け入れて、自分を落ち着かせて、安心するような言葉を言い聞かせるならば、症状の悪化を防ぐことができます。

 

「大丈夫、この症状はコントロールできる。」

「これは、どうせすぐ過ぎる。体が反応するままに、まかせよう。」

 

などの、ポジティブな言葉を繰り返しましょう。

 

14.ポジティブな言葉と、呼吸法(あるいは、リラックス法)を組み合わせる

 

ポジティブな言葉を繰り返しながら、腹式呼吸(または、マッスルリラクセーション)を行うことにより、最大限の効果が期待できます。

 

通常は、パニック段階の初期で、まず呼吸法を行い、その後すぐに、ポジティブな言葉の繰り返を行うのが最善ですが、人によっては、両方一度に始めたり、或いは、1~2分間呼吸法を行って、身体的反応に十分対処した後に、ポジティブな言葉を導入する方がいい場合もあるでしょう。色々試してみてください。また、組み合わせを行う前に、それぞれの方法を、個別に練習しておきましょう。

 

 

 

以上、1~14まで、主に認知行動療法に基づいたパニック障害の対処法を、ご紹介しました。特に、9~14までは、パニックのみならず、他の不安神経症の症状にも応用できる方法です。各種リラックス法は、例え数分間でも、毎日練習すればするほど、蓄積効果があり、数週間も続けて行えば、よりリラックスしやすい体質に変化することが可能です。よかったら、試してみてくださいね。

 

パニック症状の対処法(前半)

パニック発作の対処法を、The Anxiety and Phobia Workbook 3rd edition (Edmund J. Bourne, Ph.D. 著)より、抜粋したものです。症状に苦しんでいるかたのご参考になればと思います。

 

1.避難する

 

もし、恐怖の対象の近く、あるいは、その状況下にある場合は、不安が治まるまでの間、その場から離れましょう。例えば、スーパーで買い物中の場合は、買い物カゴを置いて、外にでる。車を運転中なら、路肩に車を止める、など、たいていの状況には、逃げ場があるはずです。

 

この際、「避難」と「逃避」を区別することは、重要。「避難」は、気分がよくなったら、また戻るという意図のもとに、一時的にその場を離れることを意味します。「逃避」は、対象に対する恐怖感を増長させる行為に過ぎません。気分が改善したら、必ずまた、その状況に戻るようにしてください。

 

2.人に話しかける

 

近くの人に話しかることにより、パニックの症状や不安な考えから、意識をそらすことができます。スーパーでレジに並んでいるときや、飛行機の中などで、とても効果的な方法です。公の場でスピーチする場合は、緊張していることを聴衆にあらかじめ打ち明けた方が、緊張は和らぎます。

 

3.動き回る、体を動かす

 

動き回ったり、体を動かしたりすることによって、アドレナリンの増加による過剰のエネルギーを消費することができます。職場なら、トイレまで、廊下をひとしきり歩く、家ならば、身体活動を要する家事に勤しむなど。或いは、ジョギングや水泳などの運動、ガーデニングなどに従事するのもよいでしょう。

 

4.「現在」にとどまる

 

まわりにある、具体的な物体に意識を集中させましょう。電車の吊り広告とか、外に見える雲とか、スーパーの雑誌コーナーの本など。「現在」にとどまって、外界の対象物に意識を向けることにより、不快な体の症状や、悲観的な思考から、気をそらすことができます。

 

5.単純な反復作業を行う

 

パニックの症状や不安感から気をそらす、単純な反復作業が色々あります。

 

・ガムを包み紙から取り出して噛む

・100から3まで、数字を逆に数える

・財布を取り出して、小銭を数える

・カギのギザギザな部分や、ブラシの歯に触って、感触を確かめる

・手首に巻いた輪ゴムを、パチンをはじく

・ぬれたおしぼりを顔に当てる

・パニック時用のセルフ・トークを書いた紙を取り出して読む(「大丈夫、これはすぐに終わる。」等)

 

6.集中力を要する活動に従事する

 

これは、不安が高まっているときや、パニックの時は、開始すること自体が難しい行為ですが、一度従事してしまえば、より継続して、かつ、効果的に、不安から注意をそらすことができます。

 

・面白い本や雑誌を読む

・パズルを解く

・縫い物や編み物をする

・トランプやボードゲームをする

・計算する

・楽器を弾く

・今日の計画を立てる

・絵を描いたり、粘土で遊ぶ

 

7.怒りを表現する

 

不安と怒りは、相容れない反応です。この2つを同時に経験することはできません。パニックが、心の深いところにある怒りや欲求不満の代役を果たしている場合が、よくみられます。怒りを、単に言葉で表現するだけでなく、(怒りを表しても害のない対象物に向けて)身体的に表現すれば、パニックの発生を防げる場合があります。

 

・枕をたたく

・安全な場所で叫ぶ

・卵を1ケース、バスタブの中に割りいれる(あとですぐに洗い流せます。)

・サンドバッグを殴る

 

パニックの初期症状自体に怒りをぶつけることが、効果をあげることもあります。パニックと闘うという意味ではなく(それでは逆効果です)、恐怖の背後にある感情を、別の感情に変換させるのです。

 

「また、これか!もう、人がどう思おうと、知るか!」

「パニックなんて、ほんとにバカバカしい反応だ!」等。

 

※ただし、「パニックに怒りをぶつける」のは、一番先に試すべき方法としては、お勧めできません。他の方法を先に試してみてからにしてください。

 

(後半へ続く)


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ネガティブな感情の対処法

昨年開催した感情の扱い方のセミナーに参加していただいた方にはおさらいになりますが、ネガティブな感情の扱い方を、ごく簡単に書いてみたいと思います。

ネガティブな感情は、その感情を抱いたとき、通常取りたくなる行動の反対のことをして対処する。

たとえば、何かを恐れているときは、そのものから逃げたり避けたりしたくなるのが人情ですが、避けないであえて直面する。そしてそれを何度も繰り返し行えば、しまいに怖くなくなります。

例えば、人前でスピーチするのが怖いとき、何度も場数を踏めば、慣れて怖くなくなる、など。

悲しいときは引きこもりたくなるかもしれませんが、あえて外に出るようにするとどっぷり落ち込むのを避けられるかもしれません。

誰かに腹を立てた時は、その誰かに向かっていき、攻撃したくなるのが自然ですが、そういうときは、あえてその人から離れて距離を置くほうがよいでしょう。

怒りの感情のままにぶつかっていくと、たいてい、言わなくてもいいことをいったり、最悪、手を上げたりしてしまい、人間関係がこじれて、もっと問題を増やしてしまいます。自分の苦痛を増やさないためにも、感情のコントロールができるくらい落ち着くまでは、いったんその場を離れたほうが賢明でしょう。

あるいは、怒っている相手にいじわるをしたり、苦しめたりしたい気分になるのを、あえて優しくするのも効果的な場合があります(これをするのは、「言うは易し、行うは難し」なんですが)。自分に好意を向けてくる相手を攻撃したり、傷つけたりするのは、通常の人間関係においては、結構難しいもの。こちらがあえて優しくすることにより、相手の敵意が和らぎ、その場の空気が変わり、結果として、こちらの怒りも和らぐということが起こりえます。

以上、基本的な「ネガティブ」感情の対処法を書きましたが、本当は感情にはポジティブもネガティブもないんですよね。快い感情とか、痛い感情とかはありますが、いい、悪いというのは実際にはありません。どんな感情も必要だから起こる、ただそれだけです。

一番大事なのは、どんな感情であっても、自分の感情をちゃんと認識して、体験する、ということ。それが自分の感情を大事にするということでもあると思います。

そうすると、感情は滞らずに流れていきますから。

多くの心の問題は、感情の滞りから発生するのだと思います。

どうか、自分の感情(気持ち)は、大切に扱ってください。

 

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心のお医者さんの選び方

 

私がアメリカから帰国して、日本の精神医療事情を初めて知ったとき、ショックを受けたことは多々あるのですが、その一つに、処方薬の多さがあります。

あまりにも多種類の、重複した薬を出しすぎているように思います。「不安」というひとつの症状に、5種類も6種類も薬が処方される。

私は精神療法士なので、精神科医や心療内科医と違って、薬の処方はできませんし、薬物療法は専門外なので、意見する筋合いはないのかもしれません。それでもアメリカでは私たちは精神科医とチームを組んで共通の患者を治療するので、どういう症状の人にどういう薬がどのくらい処方されているかは、割合よく把握していました。

アメリカでは日本以上に向精神薬の処方薬の依存が問題になっており、何年も何十年も向不安薬や麻酔的な作用のある痛み止めを飲み続けた人が、それなしでは生きていけなくなる姿を、実際に私も見てきました。そういう薬に依存してしまうと、麻薬と同じで、薬が切れると強い不安に耐えられず、半狂乱になったりします。そして、薬を手に入れるためならなんでもするようになる。慢性的な痛みがあって痛みどめを処方されている自分の母親のかばんから、薬を全部盗み出すことを繰り返す。母親は娘に盗まれないよう枕の下に薬を隠して寝ている、というケースも割合よくありました。こういう場合、娘の薬への依存のために、親子関係もひどく傷ついてしまっていました。

特にベンゾ系の向不安薬は、即効性がある代わりに依存性が高いので知られています。その結果、やめられなくなり処方した医者が訴えられるということが多くなり、ベンゾ系の薬はもうアメリカでは処方されなくなってきました。日本では、おそらくまだ一番多く処方されている薬の一つですが、アメリカに持ち込めば、麻薬扱いで処罰されます。

向精神薬を飲みすぎて薬漬けになっている人の顔は、見ただけでわかります。表情に生気がありません。向精神薬は、丹田に蓄積されている生命エネルギーを大幅に奪うので、人を無気力にします。活力を奪うだけでなく、集中力、記憶力も鈍らせ、意志の力も奪ってしまう。だから、自分の心を自分の意志でコントロールする力は低下します。自分の心をコントロールできなくて、どうやって心を健康な状態に戻せるでしょう。

もちろん、このようなデメリットがあっても、向精神薬を飲むメリットの方が大きい場合も、中にはあるでしょう。飲まなければ自傷他害しかねないほど心が不安定な場合などは、薬を飲んだほうがいいと私も思います。

でも、薬を飲むことにより、余計症状をひどくしている場合や、もともとの症状以外に、体調を悪化させる等、別の症状を引き起こしている場合も、多々見受けられるのも事実です。

こういうことを踏まえて、精神科医や心療内科医にどうしてもかからなければならないというなら、副作用を訴えたとき、ちゃんと耳を傾けてくれる先生を選ぶよう、お勧めします。それと、薬を処方するとき、それが何の薬で、どういう作用があり、どういう副作用があるかまで、ちゃんと教えてくれる人。向精神薬に副作用はつきものです。そこまでちゃんと説明してくれるお医者さんは、少なくとも誠意があると思います。

これは、身体のお医者さんにも言えることですが、心のお医者さんものいうことも、権威のある人だからといって鵜呑みにしないこと。誤診というのは残念ながら実際あるので。(それも残念ながらよくあることです。)

心の問題には必ず原因があります。原因を見ないで、表面に出ている症状だけを薬で抑えるというのは、根本的解決にはならないです。たぶん、今の日本の精神医療システムでは、ちゃんと原因まで探って根本的治療をするというのが時間的にもその他の事情的にも難しいのでしょうが、「この人、そんなにたくさん薬を飲み続けなくても、治るのに。(っていうか、薬を飲み続けても、ここを改善しなきゃ治らないのに。)」と思う人が巷にあまりにもたくさんいて、本当に歯がゆいです。

そこまで薬に頼らなくても、心の治療ができるようなシステムが、早く日本にできたらいいのに、と切に願う今日この頃です。                                                                                                                                                      

 

 

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ただいま、勉強中

今度のセラピーグループでは、マインドフルネスをテーマとして取り上げる予定。

なので、マインドフルネスに関する知識をおさらいし、さらに磨きをかけるため、本を読んでいます。

カウンセリングの勉強は、ここまでやったからいい、というものではなく、スキルアップのために常に続けていかねばならないと思うし、また、やるのがとても楽しいです。精神医療の最先端であるアメリカの臨床心理では、新しい療法がどんどん生み出されており、少し前まで一般的だった療法はもう古い、ということがよくあります。効果のほどについても、よく研究されている。遅れないように普段から勉強は怠らないようにしないと。

マインドフルネスは、一言でいうなら、「自分の中や外で起こっていることに、ちゃんと気づきながら、今、ここに生きるということ」です。

ほとんどの人は、過去や未来に囚われて悩み苦しみながら、自分の内面や自分の周囲で何が起こっているかほとんど気づきもせず、半分眠ったように日々を送っています。マインドフルネスを実践すれば、意識が覚醒し、今、この瞬間において、苦悩や悩みから解き放たれることが可能です。即効性が高い技法でもあります。

ただ、それを日常的に実践するのはなかなか難しく、概念として理解するのも、最初は難しい。それもそのはず、もともとは禅の修行の一環として行われているものなのです。

アメリカでは、近年、マインドフルネスは心理療法のスキルの一環としてかなり体系化され、さかんに研究もされています。うつや不安などの症状にも効果が高いのですが、特に、治療が難しいとされていた境界線パーソナリティー障害の治療に組み込まれて、成果を上げていることは注目に値します。

そのマインドフルネスの勉強を邪魔し、マインドフルな状態を妨げる存在がひざに…(-“-)。しょうがないから、ネコの上に本を広げる。「意識の対象としてフォーカスしなければ、物体は存在しないのと同然」と自らに言い聞かせることにより、この難局(=太ったネコがひざに乗って勉強の邪魔をする)を切り抜けようと思います。

                                                                                                                                 (Chika)

 

 

 

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心の状態と部屋の状態

物を捨てられず、部屋が散らかっている人は、鬱の人が多いようです。だから、家をゴミ屋敷にする人は、たいてい鬱だと思います。心にもいらないものをため込みすぎて、動けなくなっている状態ですから。 

アメリカにいたときのクライアントさんで、いらないとわかっていても、次から次へと物をため込み、捨てられない人がいました。この人は、物を捨てるのが怖いと言っていおり、つまりは変化を恐れている人でした。捨てればスペースができて新しいものが入ってこられるのですが、今までにさんざん痛みを経験しているため、新しい体験を恐れるのです。もちろん、これは深層心理の話で、この人自身はその自覚がありませんでした。この人はセラピーを信じていないと言い、自分をよくするためにどんな手法も使ってほしくない、ただ話を聴いてほしいだけだと言い張り、何年も規則正しく通い続けては、同じ内容の不満を変わらず言い続けていました。この人の症状はもちろん一向によくならず、症状を一時的に抑える向精神薬を大量に飲み続けているため、身体が耐え切れなくなって、時々気を失うまでになっていました。

一方で、不安が強い人は、しばしばとても部屋がきれいです。 

同じくアメリカにいたころのクライアントさんですが、OCD(強迫神経症)の人で、不安から気をそらすために、毎日夜中に何時間もかけて部屋を掃除している人がいました。そんな必要ないのに、同じところを毎日きれいにするのをやめられない。そして疲れ果てていました。 不安な人によくある特徴の一つとして、この人は、セッション中よくしゃべる人でした。話していないと不安なのでしょう。こちらがあまり口を差し挟めないくらい、次から次へと話す。専門用語ではこれをpressured speech(切迫談話)といいます。

 常に頭が過剰に動いているということは、思考が静止したときに沈黙の中で湧き上がってくる自分の本当の感情や心の問題と向き合うことを、恐れている可能性があります。けれども、そういう場合、やはり、逃げたり避けたりすのをやめて、紛らわせている不安と向き合わない限り、症状が改善しません。  

このように、心の状態と部屋の状態は、密接にリンクしているものだと思います。

                                            (Chika)

 

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他人より自分を観る

周囲の人に対する悪口や不満を、言ってはいけないとはいいませんが(ため込むよりは吐け口を見つけたほうがいい場合もあるので)、ただ、残念ながら、それをしている間はその人は幸せになることはできません。

また、自分に害を及ぼした(と信じている)人が、心理学的にいかに病的であるかを熱心に分析する人がいますが、厳しい言い方をすると、それも時間の無駄です。なぜなら、いくら相手を分析しても相手は変わらないからです。相手が悪い、自分は被害者だと考えることにより、一時的に慰められて気分がよくなることはあるかもしれませんが、それでは状況は悪化することはあっても、よくなることはまずないでしょう。

自分ではなく、他人の問題にフォーカスしている間は、問題は解決しません。

 

「隣人の語ること、行なうこと
 考えることを気にかけない者は
 どれだけ多くの利益を受けることだろうか」

「他人の魂のなかに何が起こっているか
 気をつけていないからといって
 そのために不幸になる人は
 そうたやすく見られるものではない
 しかし
 自分自身の魂の動きを注意深く見守っていない人は
 必ず不幸になる」

 

マルクス・アウレリウス・アントニヌスの名言は、真理をついていると思います。

どんなに他人の中に過ちを探しても、自分の苦しい状況は改善しないということです。自分自身の内面に目を向けて、なにが今の不幸せな状態の原因であるかを見つけ、それを変えようという意志を持ち、正しい方向に努力することによってのみ、状況はよくなっていくものだと思います。

 

 

                                         (Chika)

 

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