盛岡心理カウンセリング・ハミングバード

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メンタルヘルス

不安列車を降りる

10月、アメリカにセミナーに参加した際、会場で購入したマインドフルネスの本から抜粋し、訳したものです。マインドフルネスに基づいた不安コントロール法です。参考にしてみてください。

 

「不安列車」を降りる

 

思考は、「一連の思考(a train of thoughts)」というように、連なる列車にとてもよく似ています。もしも、「不安な思考の列車」に飛び乗ってしまったら、どうなるでしょう?その列車は、あなたをどこに連れて行くでしょう。終点はどこでしょうか。あまり楽しい場所とはいえない、「心配の国」や、「悶々の村」や、パニックの町」に行きついてしまう人もいるでしょう。このエクササイズは、あなたがいつでも列車を降りて、プラットホームに戻るための手引きになります。切符を買ってしまったとしても、あなたには好きな時に、たとえ隣の駅ででも、列車を降りる力があるのです。

 

どうやって

 

  1. 自分の思考に対して、中立で、無判断でいてください。あなたの不安思考を、単に「頭がさまよっている状態」だと気づいてください。
  2. 不安列車に対し、オープンで受容的な態度をとってください。自分の思考と戦うかわりに、不安列車の車掌さんに、こうあいさつしましょう。「こんにちは、古いお友達。また会いましたね。」
  3. 証拠を探して、自分の思考の信ぴょう性を吟味しましょう。この考えが本当に正しいという証拠は何ですか?過去にこういう考えがあたっていなかったという事実はありませんか?恐れは現実のように感じられるかもしれませんが、本当はそれは真実に基づいていないかもしれず、そういう感じがするというだけでは、それが実現する根拠にはなりません。
  4. さあ、もう、あなたはプラットホームにいて、列車を降りています。楽に深呼吸しましょう。
  5. 微笑んで列車を降りた自分をたたえてください。

 

いつ

 

気が動転した時、不安がとまらなくなりそうなとき、パニックになりそうなとき、いつでもこれを使ってください。早い段階で使えば、それだけ列車を降りるのも簡単になります。

 

参考文献: Altman, D. (2016). 101 Mindful Ways to Build Resilience: Cultivate Calm, Clarity, Optimism & Happiness Each Day. Eau Claire, WI. PESI Publishing and Media.

 

 

自分を好きになる秘訣

失敗がなく、なんでもできて、スタイルもよく、見目麗しく、頭も抜群dね、お金持ちになれば、自分に満足して自分を好きになれるのでしょうか。決してそうではありません。

もし一時的にそうなったとしても、自己価値感が低い人は、また別の欠点を探して自分が嫌になるでしょう。

自分を好きになる秘訣は、完全無欠になるのではなく、不完全な自分を受け入れることです。

母親が子供を愛するのは、子供が完璧だからではなく、汚したり、物を壊したり、散らかしたり、駄々をこねたりする子供を、その不完全性を含めて、ありのまま愛するからです。それが無条件の愛というものです。

無条件の愛を、自分に対して向けること。

そうすれば、他者に対しても優しくなれるので、愛が広がり、結果としてこの世界はよりよい場所になっていくでしょう。

 

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依存を手放す

すべての中毒的な依存は、根本的には、愛を似て非なるもので埋めようとする、代替行為なのではないかと思います。

お酒、ギャンブル、麻薬、ホストやキャバクラ、電話占い、恋愛などの人間関係。いろいろありますが、そこに執着する心理には共通点があるなあと、色々な人を見ていて思います。

ただ、そこに執着していればいるほど、確実に本当の愛から遠ざかってしまいます。

執着しているものを手放すと、空虚さと向き合わなければならないから怖いのだと思いますが、実際のところは、手放すことで、新しいものが入ってくるスペースが生まれるんです。逆に言うと、手放さないと、本当に欲しているものは入ってくることができない。

一時的な快楽しか与えてくれず、長い目で見ると自分を毒するものを手放すのは難しいかと思いますが、もう何年も電話占いにはまってしまって、とか、ホストやパチンコでお金を使ってしまって、という人を見ていると、それを続けている限り、幸せな状態ではないし、幸せな状態になりえないことがわかります。

自分の本当の気持ちと向き合うのは、辛いでしょうが、それも一時的なもの。ちゃんと見て感じてあげると、その辛さは長続きはせず、やがては必ず消えていきます。辛い気持ちを、見ないように目をそらしたほうが、その気持ちは水面下で継続するものです。そうなると、やがて鬱や不安、コントロール不能の怒りなどになって、心を病む人が多いです。

自分の心から逃げないで寄り添い、自分を惨めにするものを手放す勇気を持つことは、幸せになるために、とても大切なことだと思います。

 

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毒親という言葉

毒親という言葉が、最近はやっているみたいですね。

アダルトチルドレンという言葉も、日本ではもうすっかり定着していますね。アダルトチルドレンは、アルコール依存の親がいる機能不全の家庭というのがもともとの意味ですが、その発祥の地のアメリカでも、近年はもう聞かれない言葉です。ちなみに、毒親と同じく、精神医療の専門用語ではありません。

毒親という言葉を聞いて思うのは、その言葉を好んで使っている人は、自分の心の問題をなかなか乗り越えられないのではないかなということです。

なぜなら、そこには、

「親のせいで自分がこうなった」

という、他責的なニュアンスがとても強く含まれているから。それは、被害者意識を植え付けてしまう言葉だからです。

そういう意識状態にある人が、過去を乗り越え、自分の傷を癒して、元気になったという例を、私は今だ見たことがありません。逆に、被害者意識が強い人が前に進めず、幸せになれない例なら、いつも見ています。

なぜか。

直接的な原因が親にあったとしても、自分の傷を癒して、幸せになるのは、絶対的に自分の責任だから。親はそうしてはくれません。親以外の他人もそうはしてくれません。最終的、究極的には、自分でそれをするしかないのです。

これは、一見、不公平で残酷なように聞こえるかもしれないけれど、見方を変えるととても素晴らしいことです。まわりの人や環境がどうあろうと、自分の心は自分の思い通りにできるし、自分の人生も自由に創造できる可能性を、人は持っているということだからです。

誰かのせいにすると、その時は楽かもしれないけど、長い目で見ると、自分の可能性を制限し、心を縛ってしまうという、とても辛いことが起きてきます。

アダルトチルドレンという言葉にも、毒親と同じ意味で、あまりこだわらないほうがが心は自由になれるのかなと思います。

私がアメリカでカウンセリングしていた頃、職場にセラピーに来ていた、常時300人くらいいるクライアントさんは、9割以上がいわゆるアダルトチルドレンでした。理想的な親を持った人など、ほとんどいませんでした。(アダルトチルドレンが大多数で、そんなのは当たり前だから、アメリカでは使われなくなったのかもしれないと思います。)ドラッグや犯罪が蔓延する社会なので、当然家庭が崩壊している人が大多数、近親相姦などのひどい虐待は日常茶飯事、家族が自殺したり殺されたりすうのを目撃するといった壮絶なトラウマを抱えている人も珍しくはありませんでした。それでも、自分で自分を癒し、人を許し、過去は過去として、前に進んでいける人は、たくさんいました。それが簡単な作業だとは決して言いません。けれども、人にはそれができる力が備わっていることを、私は多くのクライアントさんに教えられました。

心の問題を乗り越えて幸せを築いていける人の共通点は、自分の不幸を人のせいにしないこと。犠牲者意識を抜け出していること。そして、おまけにもう一つつけ加えるとすると、愛があることですね。心に愛がある人は、人も自分も癒すパワーが大きいです。人には誰にでも自然に愛は備わっており、ブロック(心を阻害するもの)が多いとそれが表にはでてこれない。それだけの違いなです。愛を表現して癒しを実現し、幸せになれるなれるポテンシャルは、どんな人にもあるというのが、私の信念です。

言葉は意識の表れですが、言葉を選ぶことによって意識を変えることもできるので、自分を進化させ、成長させるような言葉を選択するよう、気をつけてみてはいかがでしょうか。

 

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「統合失調症薬で85人死亡」の記事に思う

先日、新聞で見かけた記事に、ゼプリピオンという統合失調症薬で85人が死亡し、問題になっているとありました。

これは2013年から使われている新薬で、注射して効かせるタイプの薬のようです。

これを見て、改めて精神疾患に使う薬(向精神薬)の危険性について思いを馳せました。

私は精神科医ではないので、薬物療法は専門外なので、あくまでも個人的意見なのですが、薬は身体にとって異物であり、人工的に作られた薬の場合、副作用はほぼ必ずあると考えています。

アメリカでの臨床経験を含め、様々な薬を長期にわたって服薬され、中には中毒になり、それがなくては生きていけなくなった挙句、過剰摂取してショック死されたクライアントさんも見てきた私としては、薬だけに頼る精神の治療には非常に疑問を抱いています。

特に日本の精神医療の在り方には、以下の理由から、とても危惧しています。

1)アメリカではすでに危険なので使われなくなっている薬が、いまだによく使われている。

2)同じ症状に重複した作用のある幾種類もの薬が、大量に処方されている。

3)正確な診断ができると思われる精神科や心療内科が少なく、誤診が非常に多い。特に統合失調症、双極性障害、発達障害の過剰診断は目に余るものがある。

3)に関していえば、例えば、「自分が嫌で仕方がない。無気力で、何をする気も起こらない。もう死ぬしかない。」と言っている人が、心療内科に行って、時間をとって話を聞いてもらうこともなく、発達障害の心理検査だけ与えられる。その結果、発達障害の傾向はあるが、機能的には問題がないレベルでしょうと言われる。こういうことが実際にあります。この人の場合、明らかに希死念慮を伴った抑うつがターゲットになるべき症状であり、緊急に治療的介入が必要なのですが、主治医はそれを見逃してしまっています。また、「自分が嫌い」という状態は、薬で治すことはできません。なぜ自分が嫌いなのか、いつから?そのきっかけは?というところから聞いていって、どうしたら自分を受け入れ、生きる辛さを軽減できるか、という方法を探る必要があると思いますが、話も聞いてもらえず、薬を処方されるだけでは、それはできないでしょう。例え薬で仮に一時的に気分が軽減したとしても、根っこにある鬱を引き起こす原因がそのままであれば、またいずれ症状が優勢になってくる可能性が高いです。

加えて、統合失調症や双極性障害をあまりにもイージーに診断してしまう傾向は、とても危険だと思います。なぜなら、これらの診断が出れば、強い薬(抗精神薬)が処方される可能性が高く、それがもし誤診で必要のない薬であれば、益になるどころか害になります。

脳内神経物質に作用する向精神薬は、摂取し始めた時は異物であっても、体がそれに慣れるに従い、それがあって初めて正常に脳が作用するようになってきます。言い換えれば、それがなければ正常に作用しなくなる。身体が依存してしまい、薬を切れると不安で仕方がなくなり、いてもたってもいられないので、盗んででも薬を手に入れようとするクライアントさんが、アメリカに何人もいました。

また、大量の処方薬を長年飲んでいる人には、共通した表情があり、それは大麻や覚せい剤、ヘロインなどの麻薬を長年常用している人と酷似していることもつけ加えておきます。ひとことでいうなら、薬に支配されて、生命力を抜かれてしまった、ソンビのような生気のない表情です。恐らく、人工薬には本来備わっているプラーナ(氣)を弱める作用があるのだと思います。

日本では、ネガティブな症状(抑うつ感、無気力、表情のなさなど)だけで統合失調症と診断されるケースが多いようで、びっくりしていますが、妄想や幻覚、特異な言動などのポジティブな症状がなければ、本来は統合失調症の診断基準に値しません。また、双極性障害の躁の症状にしても、正常範囲内と考えられるのに病気にされているケースが多いように思います。ストレスが高まったときに怒鳴ったり、買い物で発散させるという行動は、誰でもしうることで、それがそう頻繁でなく、ストレスレベルからして無理もない状態だったり、使った金額が収入や貯蓄の額からして、そうダメージを与えるものでない場合は、正常範囲内と判断できるかもしれません。そのあたりも詳細に聴取してなければ、正確な診断はできません。

色々書いてきましたが、最終的に、自分を守るために、適切な診断を下し、適切な治療をする力のある医師や病院を選ぶというのは、自己責任になってしまいます。専門家のいうことだからと、盲目的に鵜呑みにしないで、少なくとも処方された薬の作用、副作用を自分で調べて知っておく、おかしいと思ったらセカンドオピニオンを得るなどして、自分がよくなり、幸せになるために、自身の判断を用いてほしいと思います。

 

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自尊心とガソリン

今日、読んだ何かの文で(英語だったけど)、

「才能に恵まれているけど自尊心がない人は、ガソリンのない高級車みたいなものだ。体が不自由だけど自尊心が高い人のほうが、多くを成し遂げることができる。」

と書いてあり、なるほど、その通りだな、と思いました。

高学歴でも、自尊心が低いために、社会に出て仕事に就けず、不安やうつにさいなまれて引きこもっている人を知っています。

一方で、障がいがあっても、生き生き働いたり、人生を楽しんだりしている人は、世の中にたくさんいます。

自尊心っがあるって、自分を大切な存在と認識している、自分に対する愛がちゃんとあるってことですよね。内在する愛のパワーは、車のガソリン、つまり、エネルギー源になります。

自分に自信がない人は、例え体格がよくても、なんとなくエネルギー不足に感じられ、自己に尊厳が備わっている人は、体が小さくても、冒しがたい力づよさを感じるわけも、ここにあるのだと思います。

 

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心と体を壊すものと癒すもの

この仕事で多くの人を見てきて思うことがあります。

憎しみや妬みや恨みが、いかに人を害するか。

悲しみは、否定的な思いが人に向けられていない分、まだましなのですが、人に向けられた否定的な思いは、それが強烈であればあるほど、場合によっては相手も幾分か害するでしょうが、何よりもその人自身の心身をむしばんでいきます。その思いを発する人は、苦しく殺伐とした気分になるだけでなく、容貌が衰え、病気にもなりやすくなります。おそらく、それらの感情を作り出すために、自分の中にある非常に多くのエネルギーを燃やさなければならないため、エネルギーが枯渇してとても疲れるし、免疫も落ちるのだと思います。否定的な感情のエネルギーというのは不調和で不自然なため、大量に長い間持続させると、有害な影響を自分の心身にもたらします。

自分の苦しみを人や環境のせいにして、人や社会を害するような言葉や行動を強烈に生み出している、負のエネルギーが非常に強い人は、顔つきが近寄りがたい凶悪さを帯びるだけでなく、体の方もだんだん衰弱していくようです。こういう人の奥に垣間見えるのは、たいていとても強い恐れなので、本当はそれに直面して対処しなければならないのですが、本人が自分の内面にある恐れを自覚できるレベルまで覚醒するには、長い道のりを要することが多いようです。なぜなら、こういう人たちは、自分の中ではなく、外の世界ばかり見ようとするからです。

逆に、人を瞬時にして癒しパワーアップするものは、愛の感情です。愛のエネルギーは宇宙と調和的なのです。誰かに対して、思いやりや慈しみ、優しさといった、純粋な愛の感情を抱くと、相手の癒すでしょうが、何より自分自身を癒し、パワーで満たすことができます。自分の中に内在する愛につながると、そのポジティブなエネルギーは身体や脳を駆け巡り、一瞬で波動があがります。波動が上がるというのは、具体的には、「軽い、明るい、柔らかい」という感覚として感じられます。目の前がパッと明るくなり、筋肉がリラックスしてゆるみ、体が軽く感じられるようになります。恨みや妬みを抱いている人が生きている「暗く、重く、固い」世界とは対極の状態です。

今まで苦しみの世界に生きてきた人が、自分の中の愛にアクセスしたことにより、短時間で意識状態が切り替わり、悩みから解放される例を、私はたびたび見てきました。そういう人たちは、別人のように顔が穏やかになり、表情も柔らかくなります。愛の調和的なエネルギーで満たされると、当然、心も体も元気になります。こういう状態にある人は、おのずといい現象を引き付けるので、人生もよりよく変わっていきます。

人生って、結局のところ、自分の心(意識)の持ちようなんだと思います。

 

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原因不明のうつが繰り返される時

あるクライアントさんのケースです。(プライバシー保護のため、詳細は変えてあります。)

彼女はとても前向きで明るい性格です。大学にもバイト先にも友達がたくさんいて、リーダー的存在でした。

ところが、数年前から年に何度か、わけもなくうつ状態に陥るようになりました。いつも些細なきっかけで立ち直るのですが、うつの程度は年々ひどくなり、最近では、無気力になって授業をさぼり単位を落としたり、バイトを無断欠勤したり、発作的に死にたくなったりするようになりました。あるいは、一晩中、ほとんど寝ないでスナック菓子を大量に食べ続けることもあり、ちょっと聞くと躁鬱を疑うような症状が見受けられます。

反復性のうつの場合、もし冬だけに起こるようなら、季節性感情障害(日照時間が短いため、うつになる病気)も考えられるのですが、彼女の場合、発症に決まった時期はないといいます。

そこで、私はふと思いついて、聞いてみました。

「子供時代は幸せでしたか。」

彼女はその質問に、最初は明るい表情のまま、次のような話をしました。

彼女の両親は、幼児期に離婚しており、彼女は実の父親が誰か知りません。母親は小学校の頃に再婚し、義父は母親の目を盗んでは、彼女に暴力をふるい続けました。暴力のエスカレートを恐れ、また、母親に言ったら家庭が壊れると考えた彼女は、体のあざを隠し、何年も誰にも何も言わず、平気なふりをしてきました。

彼女には幼い腹違いの幼い弟がおり、自分は長女だからしっかりしなければならない、弟を守らねばならないという思いで、共働きの親にかわって家事をこなし、表面上は明るく元気に振る舞っていました。親戚や周囲の人は彼女をしっかりしたいい子、頼りになる子だと褒め、彼女はその役割を演じ続けました。

義父の暴力は、顔にあざができたとき問い詰められ、隠し通せずついに発覚し、以来なくなったそうです。

気持ちが落ち込んだ時も、こんな気持ちになる自分は嫌だから明るく振る舞おうと、無理に気分を変え、一人になると悲しみが襲ってくるので、あえて友達と騒ぐように努めていました。

このクライアントさんの場合、原因不明のうつが繰り返される理由は明らかに感情の抑圧です。本当は辛くて仕方がなかったのに、その気持ちを無視して、元気なふりをして生きてきた。これでは、潜在に押し込まれた自分の本当の気持ちが、

「ここにいることにどうか気づいて。ちゃんと見てください。」

とばかりに、認めてもらえるまで強く訴え続けるでしょう。それでも無理やり気を紛らわせ続けると、感情はコントロール不能なレベルまで暴走し、最終的には極度のうつや躁うつになったり、強迫観念症になったり、怒りを抑えられなくなったり、といった心の症状に悩まされるようになります。ひどい場合には幻聴を発症する人もいます。

「本当はとても怖かったし、寂しかったでしょう。」

と私がいうと、それまで元気そうに振舞っていた彼女は号泣し、

「そうだったんだ。私は寂しかったんだ。」

と、そこで初めて見ないようにしていた自分の気持ちに気づいたのでした。

どんな感情でも、ちゃんとそれを認識し、感じてあげると、やがては消滅します。反対に、見ないようにすると、自分の中に閉じ込められたまま、感情は持続し、その感情が強ければ強いほど、また、抑圧期間が長ければ長いほど、痛みは増していき、解消するのが困難になります。

自分の内面と、外側でどう振る舞うかという外面に、ギャップがあればあるほど、心というものは苦しくなります。ギャップがない人は、いわゆる自然体の人なのですが、矛盾がないので生きるのがより容易になり、自然な気持ちを素直に表現する為に感情に滞りができにくく、なにかあって落ち込んだとしても、切り替えも早いでしょう。

このクライアントさんは、たくさん泣いた後、すっきりして軽くなった、今まで他のことで紛らわせていたのが、本当は心の癒しにはなってはいなかったとわかったと言い、笑顔で帰っていきました。一度のセッションで彼女の未解消の感情がすべて解消されたとは思いませんが、少なくとも今後は心の声を無視するようなことはせず、もっと上手に自分の感情を扱うことができるようになるでしょう。

身体の傷が、ちゃんとそこにあることを認識し手当してあげないと癒えないように、心の傷も、痛くてもちゃんと直面して見ないことには、癒すことができません。このクライアントさんはそれが今回身に染みてわかったので、もう逃げないはずです。原因と正しい対処法を知ったことで、彼女の反復性のうつは、今後よくなっていくだろうと思います。

 

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関心と意識

人は、良くも悪くも、関心のあるものに意識を吸い寄せられます。 

恐れも、嫌いも、一種の関心です。 

不安が強い、とあるクライアントさんが言っていたことですが、ネットで、自分に当てはまるであろうネガティブな記述を見ると、ついつい見てしまう。そして落ち込んでしまうそうです。 

見なければいいのに、なぜ見てしまうかというと、それがこの人がイヤだ、怖いと強く意識しているものだからです。 

「何を意識しているか」が、その人の住む世界を作り上げます。 

ちなみに、波長が違うというのは、普段、意識している領域が違うということです。 

普段から、平和で、楽しく穏やかなものが好きな人で、本やテレビでもそういうものを好んで見て、普段の会話でもそういう内容の話をし、頭の中でもそういうことを考えている人は、詐欺師とか、殺し屋とか、麻薬密売人とは、違う世界に住んでいます。波長が違うから、まず日常生活では接点がないし、出会わない。仮にであったとしても、話が合わないので、お互いにひかれあわず、深い関わり合いを持つことはないでしょう。 

話が少しそれましたが、つまり、不安とか恐怖の世界に住んでいる人は、不安なもの、怖いものに強い否定的な関心を持ち、それゆえ、不安や恐怖の対象に頻繁に焦点を合わせて暮らしているということです。 

その現実を変えたければ、少しずつでもいいから、きれいなもの、楽しいもの、ありがたいもの、優しい気持ちにさせてくれるものを、日々の生活の中で探すこと。そして、始めは短時間でもいいから、それに意識を向けることです。 

そうすると、慣習的になっていた意識のフォーカスが、少しずつ是正されていき、徐々に普段の気分も変わってくるはずです。癖を直すのは反復が必要です。一昼一夜では変化はないでしょうが、地道に訓練していけば、気づいたら不安が少なくなって、明るい気持ちでいることが増えていた、という結果になると思います。

 

 

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