前記事に続いて、共依存の特徴を詳しく見ていきます。
共依存の人は、しばしば、感情操作タイプのパートナーをコントロールしようと執着し、中毒的なパターンを形成します。(感情操作タイプの詳細については過去記事:http://therapyroom-hummingbird.com/?p=741を参照してください。)
コントロールできない誰かをコントロールしようと躍起になるという強迫観念的な衝動は、共依存の人を、まるで車輪の中で回り続けるハムスターのように、一歩も前に進ませないという不毛なパターンに陥れ、怒り・欲求不満・恨みというスタート地点にとどまらせます。
得られないものを求めようとする共依存の人の試みは、度重なる人間関係での失敗を通して、結局のところ自分は他者に対して無力なのだと、痛感させるに至ります。
感情操作タイプの人を変えようとして躍起になり、失敗して、嫌な気持ちを味わうという悪循環の中で、共依存の人は次第に疲れ切ってしまいます。そして、結果的に、慈しまれたい、感謝されたい、認めてもらいたい、という願望を、あきらめてしまうことになります。
こうして、感情操作タイプのパートナーが、いつか自分が望むものを与えてくれるだろうと、あんなにも自己犠牲的に、忍耐強く、待ちこがれていた信念は、やがて怒りと恨みへと形を変えていきます。
パートナーがいつかお酒をやめてくれるだろう、浮気をやめてくれるだろう、愛情や優しさを示してくれる日が来るだろう、という期待が実らないと気づいた共依存の人は、直接的な、あるいは、受け身の攻撃へと身を転じ、不屈の相手を積極的にコントロールしようとし始めます。
(参考文献:Rosenberg, R. (2013). The Human Magnet Syndrome: Why We Love People Who Hurt Us. Eau Claire, WI. PESI Publishing & Media.)
ここまでみてみると、共依存を依存パターンに駆り立てている原因が明らかになってきます。つまり、慈しみ、評価、承認を、自分自身ではなく、相手に求めようとしているということです。これが共依存が依存であるゆえんです。
その裏には、自己愛の欠如・自己肯定感の欠如といった、欠乏感があり、ゆえに、共依存の人は、おしなべて自尊心が低いという図式になるのです。
自分の中にないと感じているから、相手から与えてもらおうとし、それが自分にとって、とても必要なものだと本能的に知っているので、必死になって相手に執着する、というわけです。
けれども、自己愛、自己肯定感というのは、本来、自分の中に見出すべきであり、相手から得ることで補おうとする試みは、必ず失敗に終わります。
自己愛というのは、人間が存在する上でとても大切な要素であり、非常に強いパワーの源になります。逆に、自己愛の欠如というのは、あらゆる心の問題の源になります。
臨床の現場で、感情障害、不安障害、人格障害等、深刻な精神疾患を抱えているクライアントさんを診ていると、その根底に自己愛の欠如がある、自分に対する愛情不足がある、というケースが非常に多いことは、とても印象的です。
次回は、共依存のいくつかの種類をご紹介したいと思います。