今まで、何度も繰り返し、お話ししてきましたが、自分の感情を受け止めてもらうと、人は安心します。
自分を理解してくれる人がいると感じます。それは、安全な居場所を作り、人への信頼感を育みます。
このことは、障がいがあろうと、なかろうと関係ありません。
全てに通じるものです。
ややもすると、障がいを持っている子どもさんには、特別な対応方法があるかのように語られる場合がありますが、私は、基本的に子育ては、皆、同じだと考えております。
「子どもが何を感じ、何を考えているか」を尊重しつつ、その子どもの理解力に合わせて教えていく、ただ、それだけだと思います。
「この子は、障がいを持っているから、これが出来なくても仕方が無い」という考えもありません。
何故なら、どんな子どもでも、世の中のルールは守り、人と関わり、社会で生きていかなければならないからです。
どの子どももやる気満々です。そして、できるととても嬉しいのです。その気持ちを大切にしていきたいと思います。
私がこのような考えを持つようになったのには、きっかけがあります。自閉症と診断がついた子どもたちの療育に悩みを抱えていた頃、ある先生と出会ったのです。様々な研修会を受けて、私なりに勉強をしていたものの、どこか府に落ちず、悶々としていた時でした。
「障がいがあると特別に扱わないとならないのか?」
特別なら特別でもいいが、どこか、子どもが尊重されないような、子どもの気持ちが二の次に扱われているような、そんな違和感に悩まされていました。
そんな時です。
仕事を通じて、当時、千葉県総合教育センター特別支援教育部、現在は、千葉県立八千代特別支援学校の田中克人先生の講演会を紹介していただきました。その講演会の内容は、今まで聞いた内容とは全く別物でした。
田中先生の考えは、以下のことを前提とし、「一人一人の子どもと対等にかかわる姿勢」を大切にしています。
どんな子どもでもそれぞれの事情に合わせ、その社会を生きていくことになる。
その社会をよりよく生きていくためには、「他者とかかわっていく」必要性が生じてくる。
「他者とどうかかわっていくか」は、その子どもの「幸せな人生」にかかわってくる問題であろう。
「障がいがあっても、なくても」一人一人の子どもは全く異なる個性を持っている。
目の前の子どもを一人のかけがえのない存在として認め、しっかりと向かい合う(対等にかかわる)ことから見えてくるものがある。
「目の前の子どもへの理解が深まり、同様に子どもも、大人への理解が深まる」ことで芽生えてくる「信頼関係」が、子どもを育てていくうえで何より大切である。
参考文献: 「自閉症と呼ばれる子どもたちー相談室が考えるかかわり方のちょっとしたヒントー《応用編》」 田中克人著(2007)
田中先生の考えに基づいて、子どもと接すると、今まで理解できなかった子どもの行動も不思議と理解できるようになったのです。パニックを起こしているその気持ち、その原因。本当に不思議と伝わってくるものがありました。
そして、今まで見えなかったその子どものできる能力。長所。次から次へと、「目から鱗」のように、「自分自身の悩み」というもやが消えていくのがわかりました。
また、田中先生の対応には、常に「何故そうするか」という根拠と目的、目標がありました。
それを学ぶことで、子どもと接する時に、「子どもの反応を見ながら適宜対応に変化をつけていく」という見通しをつけることができました。
まだまだ、不勉強な点は、たくさんありますが、子どもさんの発達に悩まれている親御さんがいらっしゃっいましたら、どうぞ、今一度、子どもさんと向き合ってみてください。
診断名に振り回されず、問題行動といわれるその行動に捉われず、我が子が何を感じ、何を考えているのか、その点に意識を向けていただければと思います。
(佐々木智恵)