マウントを取ってくる人がいて、嫌だと感じる時、知っていてほしいことがあります。
マウントを取ってくる人が気になるということは、自分の心の奥にもマウントを取りたいという気持ちがあるということ。
もしそうでなければ、マウントを取られることに、不快感を覚えないはずです。
例えば、
「私は大卒だからね。」
と言われて、高卒の人が、
「嫌味な人だな。高卒より上だっていいたいんだろ。」
と思ったとしますね。
その人が、高卒より大卒のほうがいい、学歴が高いほうがいいという価値観があり、相手と勝ち負けを競う気持ちがあって初めて、悔しい、腹立たしいという感情が生まれます。
もし、高卒でも大卒でも、人としてどちらが上も下もないし、相手と競争して勝ちたいという気持ちがそもそもないという場合、相手の言葉に不快感を覚えないはず。もっとニュートラルな気持で、「へえ。そうなんですね。」とスルーできるはずです。
マウントを取られて嫌だという気持ちの裏には、劣等感を感じさせられて腹立たしいという気持ちがあるはずですし、劣等感の裏には、相手より上に行きたい、優越感を感じたいという気持ちがあるはずです。
もう何十年も前に見たものですが、今でも忘れられずに記憶に残っている、テレビのドッキリのシーンがあります。
その方は、ごく普通のサラリーマン風の、50代くらいの男性で、飲み屋さんで一人で飲んでおられました。
そこに、仕掛け人が現れ、その方のテーブルの前にいきなり座るなやいなや、勝手にその人のお酒を、自分のおちょこについで、飲み始めました。
普通は、そんなことをされたら、誰でも腹がたつのではないでしょうか。
けれども、その男性は、一瞬驚いた顔をしたものの、何も言わず、すぐに自分の徳利を手に取り、仕掛け人のおちょこに、もっとお酒を注いであげたのでした。
それは感動の光景で、モニターを見ていたタレントさんたちも、みんな驚き、感心し、温かく、心洗われるような、しんみりした雰囲気があたりを包んだのでした。
このドッキリを仕掛けられた男性は、「自分が、自分が」というエゴが少ない、とても清らかな心の持ち主だったのでしょう。
相手と自分の隔たりがなく、競い合う気持ちもない。怒らせてやろうという意図に対して、穏やかで優しい気持ちが返ってくると、ぶつかり合いは生まれることがなく、ストレスが生じる余地もありません。
もし、相手がマウントを取ろうとしても、「ああ、あなたは私より先に行きたいのですね。かまいませんよ。お先にどうぞ。」という気持ちで応じるなら、相手に腹が立ったり、それが悩みになるということはないはずなのです。
マウントを取られて悔しい思いが多いなら、自分の奥に潜んでいる、相手と同質の気持ち、優越感を得たいという思いに気づいてあげください。そして、「戦って、勝って、証明しなくても大丈夫だよ。負けても存在価値は減ったりしないよ。」と自分に優しく声をかけてあげてみてはどうでしょうか。