盛岡心理カウンセリング・ハミングバード

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自分の中を他者で埋めないこと

自分の中を他者で埋めないこと

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カウンセリングをしていると、時折、その方自身ではない、別のものが入っていて、支配されてしまっていると感じることがあります。

といっても、別に誰かに乗り移られているという意味ではなく(解離性人格障害で、実際そういう方もいらっしゃいますが、この場合はそうではなく)、他人の考えとか意図とか欲求とか、そういったものがたくさん中にあって、本人自身の意思があまりない印象を受けるということ。

ひどい場合には、あんまりにも多くの人がいて、ごちゃごちゃ雑多なものがひしめき合っていているようにみえる方もいらっしゃいます。そういう方は、とても混乱していて、苦しそうに見えます。

そういう方たちは、何かを聞いたとき、よく、「わからない」と返事をされます。

自分以外のものでいっぱいなので、自分がどう感じるか、何を思うかがわからなくなっているのです。自分の意思がなくなってしまっています。

自分の中が空っぽだと、他のものが入ってきやすくなるので、操作されやすくなるのですが、多くの場合、この状態にある方は、何らかの事情で自分の中を空っぽにして、人の思い通りになることで自分を守ってきたようなところがあると思います。

このあたりは、解離性人格障害(多重人格)の方と同じですね。参考までに、解離性人格障害の女性の大多数は幼少期に性的虐待を受けたというデータがあります。自分の気持ちや思い、ニーズなんかを感じていたら辛くてやってられないような現実があれば、自分を明け渡して空っぽにし、他の人格に支配してもらって、現実に対処してもらったほうが楽なわけです。無力な子供の時には、生き延びるために必要なサバイバルスキルなのです。

今の時代は、インターネットなどを通じて、色々な人の影響を受けやすい時代です。SNSを通じて非常に多くの人と、どちらかというと思考だけのレベルで交わることをしやすいように思います。(昔だったら、実際に対面で合って、互いを肌で感じる交流が主流ですし、交流の数も限られていました)。ゆえに消化不良の交流が過剰で、自分以外の雑音がごちゃごちゃスペースを埋めてしまっている人が多いようです。

自分の中のスペースを埋めて、考える暇をなくするということは、自分の感情と向き合うのを回避するためには効果的な方法です。依存は多くの場合、これが隠れた目的です。それが買い物依存であれ、誰かとの関係への依存であれ、飲酒を含む薬物への依存であれ、食べ物への依存であれ、不快な感情から気をそらすための手段として功を奏しているわけです。

けれども、本当は、自分以外のもので自分を見えなくして、自分とのつながりを断ち切ってしまうことほどしんどいことはありません。一見、楽かもしれないけど、本当は誰にとってもそれは不自然だし、苦しいことなのです。自分にとって何が幸せか、どうしたら幸せになるかを知っているのは、他者ではなく自分自身です。自分とつながっていなければ、自分の人生の舵を取って正しい方向に進むことは不可能です。

実際は、自分自身とつながることは、怖いことではなく、とても安心できて、心地がいいものです。ずっと避けていた感情があれば、自分を感じたときにそれが浮上してきて、一時的に圧倒されるかもしれません。けれどもそれはあくまでも一時的なものです。切り離されていた自分の感情を感じることは、必要な癒しのプロセスです。必ず、過ぎ去って、その後には穏やかで平和な感覚がやってきます。

他者の思いや気持ちに支配されるのではなく、自分自身が何を思い、何を感じているか、ちゃんと感じられ、わかるようになれば、自分の軸がしっかりしてきて、自分という存在が力強く安定してくるようになります。そうなると、色々なことに振り回されやすい不安定な人ではなくなり、好きなように人生を創っていけるようになります。

そういう風に内面が変った方は、ぼんやりした顔ではなく、焦点のあった輝きのある目つき、明るく力強い表情になるので、見ていてわかります。

では、どうやったら自分とつながれるのでしょうか。そのためには、最初は少しの間でもいいから、静かに、自分一人でいる場所と時間を作ること。その時、頭を働かせないで、感じることです。自分の身体がどんな感覚なのか、気持ちはどんな状態なのか。呼吸は浅いのか深いのか。体に力が入っているなら、どの辺に一番力を入れていたか。今、自分の中にある感情は、不安か、苛立ちか、恥か、自分を責める気持ちか、その複数が混ざったものなのか。思考ではなく、感覚に身をゆだねることが大切です。いい、悪いで判断しないで、ただ感じて認めてあげると、それらの感覚は、もし不快なものであれば、だんだん緩やかに穏やかになっていくでしょう。

この辺は、マインドフルネスのスキルですね。詳しく知りたければ、今は本がたくさん出ているので、興味がある方は見てみてください。(個人的には、ティク・ナット・ハンの本がおすすめです。)

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