「私たちの苦しみの最大の原因は、私たちが自分自身につくウソだ。(The greatest source of our suffering are the lies we tell ourselves.)」
今読んでいる、トラウマ治療に関する本、The BODY KEEPS the SCORE(Bessel Van Der Kolk, M.D.著)に出てきた言葉です。
Van Der Kolk博士は、アメリカの精神科医であり、PTSD治療の先駆者であり、第一人者ですが、先日、彼のセミナーをWebcastで受けて、とても興味深かったので、今回渡米した時、本屋さんに立ち寄り、この本を買ってきました。
冒頭の言葉は、Van Der Kolk博士の先生だったElvin Semradという人が言った言葉だそうで、この先生は、私たちは、経験するあらゆる側面において、自分自身に正直でなければならない、といっていたそうです。
この言葉は、とても腑に落ちました。
心の病気は、私たちがあらゆる体験において、自分に正直であり続けることを許せば、起こらないのだと思います。
自分の心を偽って、思ってもいないことを口にしたり、思っていることを言わなかったり、感じていることを感じていないふりをしたり、見えているものを見ないふりをしたりしなければ、ストレスが細胞に刻み込まれることはなく、したがって心は病気には(ひいては体の病気にも)ならないのだと思います。
このElvin Semradという先生に関して、Van Der Kolk博士は、もう一つ、印象的なエピソードを挙げています。
博士がまだ学生の頃、
「先生、この患者は、統合失調症(Schizophrenia)だと思いますか、それとも統合失調感情障害(Schizoaffective Disorder)でしょうか。」と聞きに行くと、
この先生は、考え込んだふりをして、
「私なら、この人をMichael McIntyre(患者の本名)と呼ぶよ。」
と答えたそうです。
診断名に囚われず、その人自身を見よ、ということ。
これは、私も本当にそう思います。
診断名はある意味貼られたレッテルに過ぎず、このレッテルは、診断する側によって、患者のその時の状況によって、常に変わりうる。精神疾患の診断名自体、人間が考え出したものに過ぎない。精神疾患の名前も、精神医学界の偉い人の一言で、変わったり、新しくできたり、なくなったりするものです。
そんなものに迷わされず、患者自身を見なさい、という教えは、素晴らしいと思います。
こういう人は(そして、その言葉の価値がわかるVan Der Kolk博士も、もちろん)、患者を深い部分から理解して、その真のニーズを把握しながら、優れた治療を施すことができる、本物のセラピストなのだと思います。
(Chika)