私の高校時代、古典の先生が、
「テストで、最初に書いた答えと、書きなおした答えと、どっちが合っているか迷ったら、たいてい、最初の答えが合っているもんや。」
と言ったことがありました。
そのときは、
「そういうものかな。でも、どうしてだろう。」
と、不思議に思ったものでしたが、今なら、それがどうしてか、わかる気がします。
その先生は、お寺のお坊さんと高校教師の仕事を兼任していて、お経を読みなれているせいか、一本調子の声で、眠くなるような、恐ろしく退屈な授業をする人でしたが、なかなか鋭いことをいう人だったなあと、今は思います。
どうしてか。
なぜなら、最初に書いた答えは、直感によるもので、書きなおした答えは、思考によるものだから。
そして、いつでも、思考より、直感に従うほうが、誤りのないものだから。
正しい答えを知っているのは、頭ではなく、感覚なのです。
英語で直感のことをgut feelingというのですが、gutというのは内臓とか、はらわたという意味があります。肚の位置には太陽神経叢という神経のかたまりがあり、ここは、ヨガでいうところの、第三チャクラ(ソーラープレクサス)というエネルギーセンターに当たります。
自分を益するものか否かのYes、 Noを、私たちの直感は、このエネルギーセンターを通じて教えてくれることが多いんですね。
直感というのは、潜在意識につながっており、潜在意識というのは、顕在するものしかとらえられない私たちの思考よりも、もっとずっと包括的な視野を持ち、比較にならないくらい賢明なものなのです。
なので、頭でせっせと分析して考えるよりも、直感に従ったほうが、正しい方角に導かれるわけです。
ただし、現代人は、たいてい思考過多で、頭を使いすぎる傾向にあり、感じるということをあまりしていないので、感覚が鈍っている場合が多い。なので、直感の声を聞き分けることが、なかなかできない人が多いのだと思います。
直感の声というのは、ある程度リラックスしているとき、頭のおしゃべりが静まっているときに、聞こえてきやすいものです。あわただしく時間に追われ、緊張したり不安に駆られたりすることの多い生活を送り、いつもあれこれ考えて頭を働かせて、外からの情報で頭をいっぱいにしていると、自分を導いてくれるgut feeling、肚のあたりの感覚に気づくことができなくなってしまいます。
直感のサインを無視していると、結果、流れに乗ることができず、自分の人生を複雑で面倒なものにしてしまいます。ちゃんと道しるべを見て、正しい道を行っておけば、もっと楽にスムーズに行けたのに、違う道を行ってしまったがために。行き止まりや工事中がたくさんある面倒な道を迷いながら行き、さんざん遠回りして消耗してしまう、という感じでしょうか。
そうならないためにも、1日1回、わずかな時間でもいいので、思考を鎮めて頭を空っぽにし、心を落ち着かせる時間を持つようにすること、普段から、自分の体の感覚や、周りの景色や音などに意識を向け、「感じる」訓練をしておくことは、有益で大切なことなんじゃないかと思います。 (Chika)