盛岡心理カウンセリング・ハミングバード

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犯罪者のカウンセリング

犯罪者のカウンセリング

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先日、何かの記事で、被害者を守るため、ストーカー加害者には、カウンセリングで矯正を施すべきだとあったので、アメリカにおける犯罪者のカウンセリングについて、少し書いてみたいと思います。

アメリカでは、犯罪を犯した人に、強制的にサイコセラピーを受けさせるのは、もはや常識です。私が勤めていたコミュニティのカウンセリング施設にも、他のクライアントさんにまじって、判決待ちの人や執行猶予中の人がたくさん、半強制的にカウンセリングを受けに来ていました。

判決待ちの人は、強制ではないのですが、カウンセリングに通っているといえば判決に有利になると、弁護士に勧められて、やってくる人が多い。執行猶予中の人は、必要な心の治療を受けることが、実刑を免れ、無事に釈放されるための条件になるので、イヤイヤながらでも、真面目にやってくる人が多かったです。

あとは、服役中の人が刑務所(その町に刑務所はなかあったので、正確には拘置所)から、自発的にカウンセリングを受けたくて、看守に連れられて、手錠をかけられたままやってくることも、よくありました。

言うまでもないことですが、心から受けたいと思って受けるのではなく、刑を免れるために、いやいや受けるカウンセリングは、やる方もやりにくく、また、効果が出にくいものです。基本的に、サイコセラピーを使っても、本人が変わりたいと思わなければ、なかなか変わらないものです。本人に問題の自覚がなく、自分や今の生活を変えたいと思わないのであれば、それを無理やり外から変えることはできません。

そういえば、依存症の人など、自分を変えたいという意思のない人をやる気にさせて、変化を促す方法として、唯一、Motivational Interviewing(動機づけ面接)という療法が考案されていますね。これは、使いこなすのがどちらかというと難しい療法ですが、うまく使えばとても効果的な方法だと思います。

私もアメリカでは多くの犯罪者の方をカウンセリングしてきましたが、今回の話に関連して、印象に残っているのが、ある若い男の子のケースでした。

私が最初に彼に会ったのは、彼が18歳のころ。スーパーからラジオを万引きして執行猶予になり、カウンセリングに連れられてきました。

その時の印象は、「とても礼儀の正しい、ロボットのような子」でした。そつがなく、クールな印象なのですが、人間らしい感情がまったく感じられない。カウンセリングに来たのも、実刑を逃れるために仕方なく来た、でも、心の中を見せる気はまったくない、ただ、そつなくこなして終わらせよう、と思っているのが、ありありと伝わってきました。こういう風に、自分から「変わらない」と決めている子は、こちらとしてもどうしようもなく、また、初犯で、犯した罪が大したものではなかったので、カウンセリングも数回のセッションで終わり、彼は無事、釈放されたのでした。

その後、数年たって、私はもう一度、彼に会う機会がありました。その時、私はたまたま、オンコール・セラピストとして、通常勤務に加え、緊急対応も受け持っていたので、

「予約はないけれど、どうしても今すぐ、誰かと話したい」

といって、ロビーで待っている彼を、再び自分のセッションルームに招き入れたのでした。

たったの数年で、彼は見違えるように変わっていました。表情は気落ちして悲しそうなのですが、以前のロボット的なところが消えて、普通の人間になっていました。

彼はその時20歳そこそこだったのですが、彼女との間に子供が生まれたのだそうです。そして、子供のためにいい父親になりたい願っているのですが、最近、気持ちが落ち込んで、仕方がないのだと、涙を浮かべていました。

彼は、父親がおらず、母親に育てられたのだそうです。彼は自分が父親に捨てられたと信じていて、父親の愛情を求める気持ちと、拒絶され捨てられた痛みとの間で、苦しんでいるようでした。

以前は心に壁があったので近づけなかったのですが、今回は彼の心が開いているので、心の中に入っていき、彼の痛みを理解して、その癒やしのためにサポートしていくことが可能な状態なのでした。

「君、前、私が会ったときと、ずいぶん、変わったね。ずっと人間らしく、よくなったね。」

と、ありのままをいうと、彼は

「あのころは、感情を抑圧していたんだ。あのころは、もう何もかもどうでもいいと思っていたから。」

と答えました。

愛情のゆえに傷ついて苦しんでいる今のほうが、以前の、感情を捨てたロボットのような彼より、ずっと魅力的だと思いました。

人は誰でも、痛みを感じたとき、それを癒やしてよくなりたいと思うものです。痛いのは誰でもいやですが、だからといって必ずしも悪いものではなく、よりよい変化を促すための、大切なきっかけになってくれるものだと、つくづく思います。

 

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