盛岡心理カウンセリング・ハミングバード

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記憶のしくみ

記憶のしくみ

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私たちは、日々、新しい体験を積み重ねて生きています。でも、その体験のすべてを記憶しているかというと、そうではありません。ある体験は記憶の彼方に葬り去られ、ある体験は、時がたっても昨日のことのように思い出してしまいます。その違いはなんなのでしょうか?

カギになるのは、その体験をしたときどれだけ心身が興奮状態にあったか、なんですね。

実は、人が最も覚えているのは、傷ついた体験、侮辱された体験です。身を脅かすものに直面し、ストレスホルモンであるアドレナリンが分泌されると、今後の防衛のために、その体験は私たちの意識にしっかりと刻み付けられます。そのため、アドレナリンがたくさん放出されたできごとほど、後々まで忘れずに覚えているというわけです。

人は、概して、いい体験よりも悪い体験の方を、よりよく覚えているものなのですが、これも生存のために古くからある原始的な脳がそのようなしくみに作られているからだと言われています。

いい体験を覚えていなくても命には別条がありませんが、身の危険を感じさせられた悪い体験を覚えていないとなると、その後、同じような体験が起きたときに危険を認識して避けることができず、命に関わります。脳の最優先事項は、命を守ること、体を生かしておくことです。感情的な快・不快は、脳にとって二の次。だから、つらい経験であっても、生存のために必要ならば、忘れることなく記憶に保存されるということです。

ただ、私たちの判断は、しばしば誤ることがあります。その結果、危険ではないものを危険だと誤認識し、不必要な警戒をして、無駄にストレスホルモンを放出し、心身を疲れさせてしまうことがよくあります。「ヘビを見たら3年縄が怖い」といいますが、ヘビを見るという恐怖体験がトラウマになり、縄のように安全なものであっても、いちいち過剰に反応してしまうというということなのです。この場合、もうこの体験は終わった、「ヘビ」はいない、あれは過去のことで現在ではない、今はもう安全だから大丈夫、ということを、身体レベルで納得させることが、過剰反応をやめるために必要になってきます。

また、その体験があまりにも恐怖や苦痛に満ちていて、心が耐え切れない場合は、安全装置が働いて、記憶は意識に刻まれる代わりに、一時的に顕在意識から消去されるということが起こります。幼児期に虐待を受けた多くの人が、子供時代何があったかよく思い出せないという、臨床現場ではよくみられる現象が起こるわけも、ここにあります。けれどもそれはあくまでも一時的な対処法であり、潜在意識に抑制された痛みの体験は、長く放っておけば置くほど、心を蝕むという代償を払わなければならないので、いつかは取り出して、直面しなければならなりません。

記憶に刻みつけられた体験であれ、一時的に消去された体験であれ、それを本当に忘れるためには、その体験がもたらした痛みの感情を昇華させることが必要です。昇華とは、消化することでもあります。痛みの感情には必ず意味があるので、それをちゃんと見つめて、受け入れ、理解するということ。自分の人生から除外するのではなく、その体験がもたらした意味を見つけ、自分の人生に必要なパーツとして組み込んみ、自分自身に統合するということ。その作業ができたとき、その体験は、痛みしかもたらさない厄介な体験ではなく、自分に力を与えてくれるリソース(資源)へと変わります。それと同時に、記憶や潜在意識にとどまっている必要性もなくなるので、自然に消えていき、私たちはその体験から自由になることができるのだと思います。                                (Chika)

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