「周囲の状況を気づく力」と言いましても、漠然としていますね。
「周囲」には、いろいろなことが含まれますね。
場所や物、人、音や色、匂い、温度など、色々ありますが、ここで取り上げたいのは、「人」です。
子どもの日々の成長は、常に人との関わりの中で育まれています。
具体的に考えてみましょう。
子どもが初めて経験する集団生活は、おそらく、幼稚園や保育所。
そこで、重要になってくるのが、如何に一斉指示に気づけるかです。
幼稚園や保育所の先生が発する一斉指示は、集団生活を円滑に行なうためであったり、ルールの説明であったりします。その指示に気づけることは、子どもの混乱を防ぎ、集団生活を楽しくし、ひいては、子どもの成長につながっていきます。
もちろん、指示に気づくだけでなく、内容を理解することも求められますが、まずは、段階的に「人」に気づかなければなりません。
「物」には気づきやすく、「人 」には気づきにくいという場合があります。
「物」は、子どもが興味を示すものだったりしますので、すぐに、目に飛び込んできて、側に「人」がいることに気づかないことなど、結構あります。時に、「物」に夢中になり、声を掛けても、そのことに気づかない場合もありますね。
そのようなことをできるだけ防げるよう、小さい時から、「人に気づく力」を意識して育てましょう。
実は、その力は、お母さんのお腹の中にいる時から育てられています。
以前にもお話ししましたが、お母さんのお腹の中にいる時に赤ちゃんに聞こえているのは、ややくぐもったお母さんの声(残念ながら、お父さんの声は赤ちゃんに届いていないそうです)。出生直後に聞くお母さんの声は、赤ちゃんにとって馴染みのある声。その声に耳を澄ますような動きをします。目が開くようになると、その声の先にあるお母さんの顔を必死に見ようとします。これが、赤ちゃんにとって、初めての周囲の状況に気づく経験という訳です。
赤ちゃんが生まれると、多くの人が声をかけてくれます。それは、とても良い刺激です。その中で、赤ちゃんは、自分にとって安心で安全な声を聞き分けていきます。
そう、それがお母さんの声です。
安心安全な声を見つけると、赤ちゃんは安心して、沢山の声に興味を示していきます。
しかし、赤ちゃんは、目の前で声をかけられないと気づきにくいです。
ですから、赤ちゃんの視線の先に、声を掛ける人の表情が見えるようにしなければなりません。
それは、ちゃんと、自分に働きかけられているという感覚を養うという意味もあります。
それでも気づかない時は、赤い色など目立つおもちゃや赤ちゃんが視線を向けてくれる物を介して、人の顔が見えるように工夫する必要があります。また、人の声よりもテレビの音や画面の方に気をとられる赤ちゃんもいます。そのような場合でも、赤ちゃんの視線を意識して声を掛けたり、お気に入りのおもちゃなどを介して働きかけてあげると良いでしょう。
このようにして、「周囲の状況に気づく力」は、日々積み重ねられていきます。
色々と難しくお話してきましたが、おそらく、大抵は、無意識にやられていると思います。
ただ、時に、このことについて無意識に手薄になる場合があり、「人」よりも「物」への気づきが優位になり、成長するチャンスを逃す場合があります。
ほんの少しだけ、この当たり前のような対応を振り返っていただければ嬉しいです。
(佐々木智恵)