盛岡心理カウンセリング・ハミングバード

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罪悪感について

罪悪感について

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罪悪感というのは、一時的に持つ分には、自省して今後の行動を改正するのに役立つ感情だと思います。でも、長い間持ち続けると、心をむしばみ、自尊心を喪失させ、気持ちを萎縮させて、前に進むことを足止めしてしまう、有害な感情になってしまうものだと思います。

罪悪感を長年持ち続けた人というと、すぐに頭に思い浮かぶクライアントさんが2人ほどいるのですが、2人とも、とても自尊心が低く、恐怖心が強く、極度の鬱状態にある人たちでした。

一人は、若いころの性的虐待を期に、ゲイになってしまい、そのことを周囲に隠しつづけてきた50代の男性。彼は厳格なクリスチャンだったため、同性愛が罪だと信じ込んでいて、そのことが彼の罪悪感と羞恥心に拍車をかけていました。

同性愛であるとか異性愛であるという性的指向は、自分のアイデンティティの一部なので、それを恥じたり、隠したりするということは、非常にストレスになります。例えば、自分が日本人であるということに罪悪感を感じ、隠して生きなければならないと想像してみてください。自分を作り上げている個性の一部を否定するということが、いかに不自然で苦痛を生じるものであるか、わかると思います。

彼は、30年以上も自分のアイデンティティに罪悪感を抱き続けた結果、深刻なうつとアルコール依存、パニック障害を発症して、家から一歩も出られないところまで精神状態が悪化してしまいました。外に出て誰かに行き会うと、その人が自分を見ている気がします。周囲の人たちに心の中を見透かされているのではないか、みんなが自分のことを話しているのではないかと、常に恐怖におびえ、仕事に行くこともできなくなり、ささいな物音にも、文字通り飛び上がって、ガタガタ震えるようになってしまいました。

この人は、30年間にわたって心の中に押さえつけてきた罪悪感が、根強い恐怖感に変わってしまっていたため、症状がひどく悪化していたのでした。自分の性的指向をそのまま受け入れて、罪悪感を手放すことが、症状の改善のためには必須だったのですが、彼の宗教観がそれを容易には許さず、さらに、日々の大量飲酒で自分と向き合うことを避けていたため、進展はないとはいわないけれど、遅々してなかなか思うようには進みませんでした。

もう一人は、幼いころに、夫と別れた母親に恋人代わりにされ、性的虐待を受けていた40代の男性です。彼は、まだ子供のときに、母親の倒錯した愛情にひどく混乱させられ、心に深い傷を負ったため、その記憶を抑圧して、顕在意識から抹殺するという選択を取っていました。なので、私がカウンセリングを始めて1年くらいは、5歳くらいのときに、なにかひどいことがあったという以外は、思い出すことができず、子供のころはとても不幸だったけれど、具体的なことは覚えていないというばかりでした。

この男性の症状は、アルコール依存(以前は種々のドラッグ依存)、解離性人格障害、うつ病、パニック障害でした。非常に自尊心が低く、自己破壊的で、破滅的な行動を起こしては、自分の人生に不幸の種を作り出していました。特に女性関係において、彼は自分の破壊的衝動を抑えることができず、自分を傷つけるような危険な相手を選んでは、みじめな結末を迎えるということを繰り返していました。

彼は、子供のころの自分と向き合うことを非常に恐れていたのですが、1年以上セッションを重ねてから、ようやく性的虐待の記憶の断片を思い出して、少し語れるようになりました。それを聞いてはじめて、彼の自嘲的で自己破壊的な傾向の幾分かが、母親の性的虐待による近親相姦という、強い自責の念から来ていたことがわかりました。

彼の中には、傷ついた5歳の男の子のまま成長を止めてしまった部分がどこかにあって、辛い記憶を打ち明けて号泣したときの彼は、40歳の大人ではなく、幼い子供そのものでした。とてもシニカルで、人に対しても辛辣なところがある人でしたが、根は優しい人だったので、この人のインナーチャイルドが癒され、罪悪感を手放すことができたら、生まれ変わることができるだろうと思います。

このように、長い間心に抱え込んだ罪悪感は、心をむしばみ、凍結してしまうものです。

罪悪感にさいなまれているなら、はやめに対処して、心から解放してあげることが大切だと思います。

 

 

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