盛岡心理カウンセリング・ハミングバード

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11月

うつ病は投薬と休息で治るか

日本の精神医療では、うつ病の治療は投薬と休息が基本といわれているらしいですね。(ちなみに、アメリカではそんなことは聞いたことがありません。アメリカは心理療法がとてもさかんなので、心理療法プラス投薬治療がもっとも効果的だと言われていました。)

これから書くことは、あくまでも私の個人的な考えなので、その点をご了承ください。

うつが投薬と休息で治るかどうかと聞かれたら、私は、症状の重さにもよるが、それだけでは治らない、または悪化するケースは多いと思う、と答えます。

もともと、うつ病(正式名称は大うつ病)というよりは適応障害のうつタイプで、何らかのストレスによる一時的な気持ちの落ち込みである場合、そして、もともと比較的健康な心をもっている人の場合は、治る可能性が高いかもしれません。

けれど、本当に大うつ病の診断基準を満たしており、症状が比較的重い場合は、投薬と休息だけでは、いつまでたっても薬を飲み続け、休み続けなければならないことになる。さらに、仕事をやめるなどして、なにもせずに家でゴロゴロし続けていれば、もっと症状がひどくなる場合も少なくないと思います。(そういう人を、私はたくさん見てきました。)

誤解してほしくないのは、休息するのが悪いといっているのではありません。今まで、無理をしすぎてきた人は、休息する必要があると思います。ただ、体を休めることはできても、心をほんとうに休めることができるうつの人は少ないと思います。だから、ただ活動を休止するだけでは不十分だと思います。

ちなみに、薬は、私はあまりおすすめしませんが、死にたくなる、または他人を傷つけたくなるほど症状がひどい場合はやむを得ないと思います。でも、それ以外は、薬依存症になる危険性があること、自然の感情が麻痺して心の回復がおくれてしまうこと、肝臓や腎臓を傷め、生体エネルギーを大幅に損なうこと、副作用がこわいことなどから、個人的にはすすめられません。

実際、長年、薬に依存したあげく、いつも濁ったどんよりした表情で、ゾンビのようになってしまった人たちを、私はたくさん知っています。病院の薬を飲みすぎたショックで亡くなった方もおられました。そういうことが多くなってきたため、最近、アメリカでは、医師が訴えられるのを恐れて、依存性のあるベンゾ系の抗不安薬などは、患者に求められても処方しなくなりました。(日本では、まだまだ、ベンゾ系の薬は簡単に処方されていますが。)

では、どうやったらうつが治るかというと、やり方は人それぞれなのですが、ひとことでいうなら、うつになった原因を探って、それを是正することだと思います。

原因不明のうつと、よくいうけれど、どんな症状であっても、かならず原因があります。ほんとうに原因のない精神障害や疾患のクライアントさんに、私はまだ会ったことがありません。

心のバランスが崩れたとき、その原因を正さずして、ただ休んだり、薬で感覚を鈍らせたりするだけで、どうやってよくなるのか、私にはわかりません。

どんな症状でもそうだけれど、落ち込みとか、不安などの症状は、心が本来あるべき状態からズレているから、それを正しなさい、もしくは癒しなさいというサインだと思います。

ピンチはチャンスとはよく言ったもので、今、苦しくて辛い状態にあっても、そこには、必ず、幸せに向かうためのヒントが隠れているのだと思います。

 

パニック障害が起こるしくみ

パニック障害に苦しんでいる方は、たくさんいらっしゃると思います。今回は、パニック障害が起こるしくみについて、少しお話したいと思います。

簡単にいうと、たいていのパニック障害は、「実際には存在しない恐怖に対して、あたかもその恐怖が今、起こっているかのように、体が反応する」ことにより、起こります。

例えば、道を歩いていて、向こうからゴリラがやってきたら、たいていの人は、パニックになると思います。そして、身を守るために、筋肉は収縮して硬くなり、動悸は激しくなり、呼吸も早くなり、発汗するでしょう。これは、体内のアドレナリンが、自分を危険にさらすかもしれない対象物を認識したことにより、一挙に放出されたことために起こる反応です。

この体の反応は、Fight or Flight(戦うか、逃げるか)といわれる、防衛反応です。この状況で身を守るためは、ゴリラと戦うか、逃げるかしなければならず、瞬発力を最大限に発揮して、すばやく機敏に動けるように、体が準備をするわけですね。

もし、恐怖が実在するのであれば、その体の反応(激しい動悸、過呼吸、発汗、筋肉の収縮等)は、恐怖の対象物から身を守ろうとする、防衛反応として、必要不可欠なものですが、問題は、その反応が、頭が作り出した恐怖により、不必要に起こってしまうことです。

例えば、過去に起こった恐怖の記憶により、「またそうなったら、どうしよう。」と思ってしまう。その思考だけで、体の反応を起こしてしまうわけです。そして、アドレナリンを放出させてしまい、その肉体反応を捉えて、ますます、「ああ、動悸が激しくなってきた。息が苦しい。このまま、倒れるかもしれない。もしかすると、死ぬかもしれない。」と、ますます、Fight or Flightの肉体反応を煽り立てるような思考を、増幅させてしまうわけです。

このとき、恐怖が実在しないことを、再度意識することは、とても大切です。頭の中のおしゃべり(専門用語ではセルフ・トークといいます)を、意識的に言い換えてあげることも、パニックには効果的です。例えば、死ぬかもしれない⇒これは、ただ、体が間違えてアドレナリンを出しているだけだ。私は絶対に大丈夫だ、など。(パニック障害で死ぬことはありませんので、安心してください。)

それから、逆説的に聞こえるかもしれませんが、もう一つ大事なのは、不快な思考を無理やり押しのけようとして、抵抗しないこと。抵抗すると、かえって、押しのけようとする対象物は、強さを増し、パワフルになって押し返そうとするからです。このとき、抵抗するのをやめて、一度、その存在を頭の中で認めてあげてから、別のものに意識を移したほうが、うまくいきます。

呼吸をコントロールして、深くゆっくりした呼吸を心がけることは、最も大切です。

パニック障害については、もっとお話ししたいことがあるので、また、折を見て、書きたいと思います。

 

精神障害の診断について

うつ病(大うつ病)、躁うつ病(双極性障害)、統合失調症、アスペルガー等、精神科や心療内科で診断を受けたとき、からだの病気のように、こころの病気の申告をされたと思って、ショックを受ける方がいるかもしれません。また、今まで自分が苦められていた症状に名前がついて、安心される方も、中にはいるかもしれませんね。得体のしれないものより、正体がわかったほうが、恐怖心は薄れるものなので。

私は、アメリカで多くの精神障害のクライアントさんに診断を行っていましたが(アメリカでは資格のあるサイコセラピストなら診断書を書くことができます)、その経験を踏まえたうえで、こう言いたいと思います。「精神障害の診断名を気にしすぎないでください。」

第一に、精神医療は、身体の医療にくらべて、まだまだ発展途上です。

診断の際は、ICD-10と並ぶ精神障害の診断の手引書であるDSM-IV(The Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders IV) に基づいて病名を付けていましたが、この手引書、1952年のDSM-Iという初版では、精神障害の種類は106種類しかありませんでした。1968年に出版されたDSM-IIという改訂版では185種類、1980年に出版されたDSM-IIIは最初265種類だったのが、さらに1986年、DSM-III-Rという改訂版で297種類に増やされ、現在、使われているDSM-IV(1994年リリース)は365種類。要するに、心の病気の種類は、過去60年余りで3倍に増えているのです。(DSMの最新版は2013年5月に出版されたばかりのDSM-5ですが、まだ現場ではそれほど普及していないと思います。)これは、実際に世の中に心の病気が増えたのではなく、「こういう心の病気がある」と人間が定めた種類が増えたということです。 最新版のDSM-5では、日本で一時期盛んにいわれたアスペルガー障害が病名から外され、自閉症の領域に入れられるなど、今まであった病名がなくなったり、逆に新しい病名が付け加えられたりしています。

第二に、精神病や精神疾患の診断は、主観的なので、残念ながら、比較的信頼性に乏しいのです。

これはつまり、診断を下せる二人の専門家がいたとして、同じ患者さんを診て、同じ病名をつける可能性が、比較的低いということです。それぞれの専門家が、患者さんの症状のどこに注目するか、その状況をどう判断するかによって、うつ病と判断したり、PTSDと判断したり、ということが、実際、よくあります。なので、A病院の精神科に行ったときは双極性障害と言われたが、B心療内科で診てもらったら、統合失調症と言われ、C病院では大うつ病といわれた、などということも、ありえるわけです。そもそも、体の病気と違って、心という目に見えないものに診断を下すわけですから、ある程度主観に頼らざるを得ないのは、仕方がないことだとは思います。が、やはり、それは、一人の専門家の意見を鵜呑みにしないほうがいいという結果にもつながるわけです。

第三に、精神障害の診断は可変的です。

心の症状というのは変わりうるものなので、私がアメリカで仕事をしていたときは、クライアントさんの診断名は、理想的には3ヶ月ごとに見直すことが推進されていました。最初にはわからなかった症状があとで見つかって、比較的軽い精神障害である適応障害という診断がOCD(強迫観念症)に書き換えられたり、妄想性障害だと思っていたのが、妄想ではなく不安感が強いだけと判明したので、全般性不安障害に書き換えられたり。治療の末、PTSDの症状がなくなって病名が削除されたり、というのも、もちろんあります。要するに症状がなくなり、治ってしまえば、精神障害ではなくなるものなのです。一生付き合っていかなければならない精神病というのも、あるにはありますが、それほど多くはありません。

第四に、過剰診断というのがやっぱりあって、例えば双極性障害が過剰診断されやすいというのはよくいわれています。私の印象では、日本では特に、双極性障害に加えて、統合失調症や発達障害が過剰診断されているのではないかという気がします。

以上の理由で、「自分は、心の病気なんだ。〇〇病なんだ。」と、心配しすぎないこと、振り回されすぎないことは大事だと思います。(それから、できればセカンドオピニオンを得ることも。)自分は病気だと考えるよりも、今はこういう状態だけれど、それは変わりうるものだととらえることが大切だと思います。